2015 Fiscal Year Annual Research Report
Study on Health, Ecology, and Society in the Relocation of Oceanian Island Residents Threatened by Rises in the Sea-Level
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15H05123
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
古澤 拓郎 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (50422457)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石田 貴文 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (20184533)
塚原 高広 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (90328378)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 気候変動 / 水没危機 / 島民移住 / リーフ環礁 / タロ島 |
Outline of Annual Research Achievements |
ソロモン諸島を対象に海面上昇やそれに伴う移住計画の実態を学際融合的に明らかにし、気候変動に島嶼社会が適応していくあり方を明らかにすることを目的とする。具体的な調査項目における実績は以下のようになる。 (1)政策に関する調査としては、ソロモン諸島チョイスル州の州知事と同州タロ島移住計画実施担当者らに聞き取りを行った。また水没危機にありながらも移住計画がないテモツ州でも防災担当者・保健担当者らに聞き取りを行った。さらにタロ島等のモニタリングを行っているオーストラリアの研究者にも聞き取りを行った。結果として、海面上昇の影響としては津波時の被害深刻化など科学的データもそろいつつあるが、社会経済・文化的・生態学的要因が移住計画の阻害要因であると考えられた。 (2)文化・社会面の調査として、チョイスル州(タロ島)、テモツ州(リーフ環礁)、ウェスタン州(ニュージョージア島)で聞き取り調査を行い居住地と移住予定先の社会文化的背景の相違、災害認識と対処における教会の役割などが示唆された。 (3)生業・経済・生活国際人道支援に関わる質問票であるHESPERを元に、そのほかの情報も含め、地元住民に聞き取りを行い、特に重要な問題として飲料水確保が挙げられたが、タロ島では海面上昇の影響がそれに次ぐ問題となった。 (4)生態環境については、タロ島は住居やインフラで過密化しているのに対し、移住予定先は森林に恵まれつつも湿地などが問題になると考えられた。テモツ州ではパンノキなどの果樹を主食とする社会であり、海面上昇によっては他のイモ類主食社会とは異なる生態学的問題が生ずることが想定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海面上昇の問題と移住計画が差し迫っているチョイスル州タロ島に加え、テモツ州リーフ環礁、さらにはウェスタン州ニュージョージア島や首都ホニアラでも調査を行うことができ、調査項目のうち(1)政策、(2)文化・社会、(3)生業・経済・生活、(4)生態環境については、当初の計画以上に進展したと認識している。 その一方で、医療調査のカウンターパートの都合により健康調査を当初予定通りに実施することができず、次年度に繰り越すこととなった。 このようなことから全体としては、おおむね順調に進展しているとし、今後健康面の調査を重視していくこととする。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り、今後は特に海面上昇によるさまざまな健康影響や、移住計画に伴うそれをデータから明らかにすることが特に重要となる。 これに加えて、政策、文化・社会、生業・経済・生活、生態環境の調査も継続し、海面上昇や移住計画の影響を包括的に明らかにし、研究発表や政策提言につなげていく。
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Research Products
(11 results)