2015 Fiscal Year Annual Research Report
多衛星データの複合的活用による遺跡探査技術とその応用に関する研究
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15H05128
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
惠多谷 雅弘 東海大学, 情報技術センター, 主任技師 (60398758)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黄 暁芬 東亜大学, 人間科学部, 教授 (20330722)
鶴間 和幸 学習院大学, 文学部, 教授 (50143144)
長谷川 奏 早稲田大学, 付置研究所, 教授 (80318831)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 遺跡探査 / 衛星 |
Outline of Annual Research Achievements |
H27年度の研究では、エジプト・ナイルデルタの丘状遺跡Kom al-Diba'の土壌水分率(誘電率)計測、H28年度調査予定の中国・秦東門遺跡(連雲港市)の予備調査、および研究全体の基盤となる衛星データ収集と予備解析を実施した。 砂漠などにおいて、地中遺構の存在が土壌水分率の差となって地表に表れることがある。Kom al-Diba'遺跡の調査では、地中に存在するヘレニズム時代の神殿や住居遺構を光学衛星センサで検出するための有効波長帯(チャンネル)を特定するための土壌水分率計測を行った。具体的には、事前の考古学調査等で遺構の存在が見込まれている丘陵北部をテストサイトとして,10mメッシュの区画を設定し、各区画の土壌水分率を計測したのちに、高分解能衛星WorldView-2の可視~近赤外4チャンネルとの相関を求めた。その結果、土壌水分率は当初予想していた近赤外線チャンネルではなく、青チャンネル(450-510nm)と最も相関が高く、遺跡検出において青チャンネルの波長帯が影響する可能性が最も高いことが分かった。 一方、秦東門については秦始皇帝が立てたという記録(史記ほか)はあるが、その場所は未だ分かっていない。H27年度は、これまで構築してきた衛星情報による遺跡探査技術を同遺跡に応用するための基礎的な資料調査と予備調査を実施した。具体的には、WorldView-2、CORONAなどの多時期の高分解能衛星画像とSRTM/DEM、ALOS/DSMなどの地形情報、秦咸陽との位置関係、さらに歴史資料をもとに、東門が立てられた可能性がある有望地点を選定し、それらのグランド・トゥルース(地上検証)を行った。現時点において選定した有望地点の精査までには至っておらず、H28年度に実施予定のグランド・トゥルースでは、現地機関と協力しながら、さらなる絞り込みを行う計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エジプトの砂漠地帯およびデルタを対象とした遺跡探査の準備は順調に進んでいる。光学衛星センサや衛星搭載合成開口レーダなどの衛星データや地図の収集、文献資料の調査も計画通り進んでおり、実際の遺跡探査に向けた解析処理を実施中である。 中国への技術応用に関しても当初の計画通り進んでいる。研究分担者らによる歴史資料の収集・検討も予定通りであり、現地協力機関との調整もうまくいっている。
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度は、メンフィスネクロポリスの砂漠下に埋もれた未発見遺構の検出と秦東門遺跡の設置地点の特定を試みる計画である。 メンフィスネクロポリスには、いまだ発掘されていないエジプト王朝時代遺構が多数存在している可能性があるが、今回は北サッカラ地区を主体とした探査の実施を計画中である。現在、エジプト考古庁に対してセキュリティー登録を申請中であり、許可が下り次第、多衛星情報から選定した遺跡の有望地点をグランド・トゥルースする計画である。グランド・トゥルースでは、新たに河合望氏(早稲田大学)を連携研究者として調査チームに加え、発掘権取得を含む本格的発掘調査の実施に向けた準備も進めていく。 一方、東門遺跡の調査では、衛星データや地形データなどの空間的特徴をもとに、秦咸陽、始皇帝陵、東門の方位、位置関係の解析や当時の古環境推定を行い、リモートセンシング、考古学、歴史学などの日本チームの専門家と現地研究者らを交えた多角的な視点によってこれまで特定に至っていない東門設置場所の解明につなげていきたい。
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Research Products
(9 results)