2015 Fiscal Year Annual Research Report
ニュージーランドにおける環境保全とそれに配慮したサステイナブルな観光に関する研究
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15H05130
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
田上 善夫 富山大学, 人間発達科学部, 教授 (50145661)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森脇 広 鹿児島大学, 法文学部, 名誉教授 (70200459)
稲田 道彦 香川大学, 経済学部, 教授 (70133155)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 環境保全 / 持続可能性 / 気候変動 / ブドウ栽培 / 自然景観 / 観光 / 宿泊業 / ニュージーランド |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は研究の開始年にあたり、ニュージーランドでの現地調査に向けての準備として、2回の研究打合せ会議を行った。27年12月に現地調査を実施し、車で北島のオークランドをスタートし、ウェリントンを経て南島に渡り、西海岸、また南端のインヴァーカーギルを経て、クライストチャーチまで、北島・南島の大半を巡って調査を行った。帰国後に、現地調査のまとめの打ち合わせ会議を行った。 現地調査は、ワインの大生産地である、北島のホークスベイや、南島のマールボロー、セントラルオタゴ地方などを含んでいる。また火山であるトンガリロ山や、氷食地形のミルフォードサウンドなどの地や、主要都市である北島のオークランドと南島のクライストチャーチなどでも行った。さらにニュージーランドの南北の広範な地域を巡ることにより、同国の自然、産業などの総合的な調査を行った。 現地調査のほかに、ニュージーランドの自然的基盤や観光資源に関して、多方面より資料の収集を行い、種々の気象データ、地形データ、観光データなどを得た。とくにニュージーランドの経済や産業などについてStatistics New Zealandから、気象についてNIWA:National Institute of Water and Atmospheric Research Ltdから、ワイン生産についてOfficial New Zealand Wine Websiteから、地形についてLINZ:Land Information New Zealandから、観光に関してBooking Comなどより、多くのデータを収集した。 上記の現地調査、また収集したデータより、データベースを作成し、さらに地理情報システムを用いて分析を行った。それらの分析の成果は初年度の研究成果としてまとめ、27年3月に早稲田大学で開催された日本地理学会において、ワイナリーと環境保全、地形と可能資源、観光と宿泊施設、の3方面から発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本テーマについての共同研究、現地調査は27年度が初であったが、準備段階から進行は順調であり、現地調査も計画通りに実施された。ニュージーランドの国土は南北に長く、公共交通機関が少ないため、移動にはすべてレンタカーを使用したが、それにより全国土の連続した地域において、調査を遂行することができた。その成果として、とくに以下などがあげられる。 近年ワイン生産が急速に拡大しているマールボロー地方をはじめ、北島のホークスベイ、世界最南端のワイン産地であるセントラルオタゴなど、主要なワイン生産地を巡ることができた。それぞれに多数分布しているワイナリーでは、ブドウ栽培、ワイン醸造に加えて、テイスティング、レストラン、ツアー、ステイ、ウェディング、ガーデン、ギャラリーなどが用意され、観光の多様な需要に対応するようすがみられた。北島および南島では、特色のある地形を背景とした大観光地が存在している。北島のタウポ火山帯のカルデラと火砕流台地は、特色のある噴火や災害などが関心を集めているが、それらと人々とのかかわりなども観光資源として価値があり、このことは地形的に類似した南九州でも同様であると考えられた。ニュージーランドの宿泊施設はホテル、アパート、ホステル、モーテル、B&B、ホームステイ、別荘・ヴィラなどに分けられている。この中でとくにモーテルは、公共交通機関が少なく自動車交通を中心とする旅行形態に対応しており、大規模ではなく家族経営に適し、そのため地域の小規模観光産業として地域経済に貢献している。 これらのほかにもニュージーランドにおける多様な観光資源、とくに南島西岸での氷河・氷食地形などや、地方に展開するトレイルなど、その自然を背景にした観光地が多数存在した。また欧州人の入植以降の、開拓の歴史的遺産にも触れることができた。これらは国土の大半の地域を車により踏破したことの成果ということができる。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度の研究に続いて28年度以降には、以下に注目しつつ多面的に調査を進める計画である。 ニュージーランドでは、ブドウ栽培が近年急速に拡大し、それがマールボロー地域を中心としていること、また栽培種はソーヴィニョン・ブランに集中している。ただしその変化はこの20年間に顕著であったが、最近数年間にやや安定化してきていることについて、分析を加える。またニュージーランドと南九州にみられる、噴火規模・年代の類似したカルデラ・火砕流台地における、風隙・河川争奪などの特色ある地形の、観光・教育資源としての価値を明らかにしていく。さらに宿泊施設の中でもモーテルなどは、都市の郊外、地方に特長的な宿泊施設であるが、各地方において詳細なデータを収集する。 これらにもとづいて、作成中のデータベースをさらに充実させる。現地においても集中的に調査を進め、収集した資料および調査結果をデータベースに加え、さらに地理情報システムなどを用いて、以下の点を中心に分析を加えていく。 すなわちニュージーランドにおける環境保全とそれに配慮したサステイナブルな観光に関する研究において、ワイナリー、カルデラ・火砕流台地、モーテルを軸にして、環境保全および持続可能性を分析していく。これらは、1)地方または郊外に展開しており、2)特色ある自然あるいはその自然を活用し、3)比較的小規模あるいは家族単位での経営であり、4)高度の技術また多様な内容を組み合わせる、という点で共通している。とくに1)、2)のように、その地域の自然を前提にして成り立つために「環境保全」が不可欠であり、3)、4)のように、小規模であるが高度に複合的であって長期的な持続が求められ、「持続可能性」は重要な点である。さらにその置かれた地域の人々の暮らしや農業生産物との密接な繋がりから、「地域一体性」も調査での主要な観点の一つである。
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Research Products
(3 results)