2016 Fiscal Year Annual Research Report
Linguistic and cultural approach to the history of minority peoples in the Tay Cultural Area
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15H05154
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
新谷 忠彦 東京外国語大学, その他部局等, 名誉教授 (90114800)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 敦士 日本医療大学, 保健医療学部, 准教授 (20609094)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | タイ文化圏 / カレン / モン・クメール / ソンカン語 / パンカン語 / カドゥ語 / ソンドゥ語 / ワ語 |
Outline of Annual Research Achievements |
政治的・地理的な理由から、これまでほとんど調査されることがなかったタイ文化圏の少数民族について、積極的な現地調査によって、その言語文化資料を広範に収集し、世界で最も優れたデータベースを作り上げるとともに、そうして収集されたデータを使ってタイ文化圏の少数民族の歴史を解明することが本研究計画の究極の目的である。その目的のために、本年度は代表者の新谷がタイおよびミャンマーにおいて、カレン系民族の中でも特に資料の乏しいカヤン系民族を中心に、その言語文化資料の収集に努めた。この調査による成果は極めて大きく、実態のよく分かっていなかったカヤー州の言語状況が少しずつ分かってきた。ソンカン語、パンカン語、カドゥ語、ソンドゥ語の4つの新言語を発見し、その言語データを収集した。こうした調査の中で、カレン系言語の中にそり舌音が存在することが世界で初めて分かった。また、これまでの調査で口蓋垂音の存在も世界で初めて明らかにしてきたが、今回の調査でその地理的な分布状況がわかってきた。カレン系言語の中にそり舌音や口蓋垂音が存在することはこれまで世界で全く知られていなかったことであり、これだけでも本研究課題による調査の成果は極めて大きなものがある。一方、分担者の山田は、タイ北部および中国雲南省でモン・クメール系を中心に、周辺のチベット・ビルマ系民族も含めて、その言語文化資料の収集に努めた。この調査によって、タイ文化圏の中でのモン・クメール系民族の国境を越えた分布状況、およびその変遷が少しずつ明らかになってきた。また、モン・クメール系民族とチベット・ビルマ系民族の間の接触関係についても多くの資料を収集することができた。この調査による成果も踏まえ、チェンマイで開催された国際オーストロアジア語学会のワークショップでワ語の統語法についての研究発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(1)カレン系言語中のでこれまでほとんどまともなデータがなかったカヤン系言語の調査が予想以上に進展し、多くの新言語が発見されている。(2)カレン系言語の中にそり舌音の存在することを世界で初めて発見するとともに、口蓋垂音の分布範囲についてかなりわかってきた。(3)カレン系言語のデータ収集では、その質・量とも世界を圧倒しており、世界各地の研究者・研究機関からの問い合わせがたくさんある。(4)モン・クメール系言語のワ語の文法研究が大きく進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
ミャンマーのカヤー州の言語は、これまでまともな学術調査研究が行われておらず、まさに宝の山である。この地域の言語データの収集に一層の努力が必要である。また、モン・クメール系民族の中のラワ族の位置付けについて、国境にとらわれることのない現地調査によって、言語・文化資料からのアプローチが必要である。
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Research Products
(7 results)