2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15H05175
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Research Institution | Takushoku University |
Principal Investigator |
奥田 進一 拓殖大学, 政経学部, 教授 (60365864)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮崎 淳 創価大学, 法学部, 教授 (30267489)
守田 優 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (70210177)
柳 憲一郎 明治大学, 法務研究科, 教授 (80132752)
黒川 哲志 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (90268582)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 黄河 / 黒河 / 流域水財産権 / 水票 / 中国法 |
Outline of Annual Research Achievements |
中国では、憲法および水法において、水資源は、鉱物資源、森林、草原等の自然資源とともに国家所有に帰属すると明文で規定されてきたが、このことがかえって自然資源利用をめぐる権利関係を不明確にし、場所と状況によっては無秩序な「荒らし利用」や紛争、あるいは深刻な自然破壊の原因となってきた。 こうした状況を打開すべく、中国では1980年代に本格化する改革開放政策以降、公有制を原則としつつ市場メカニズムを利用した自然資源をめぐる権利流動化システムが構築されてきた。たとえば、土地、草原、森林等は所有権と使用権(経営権利権)を分離することで、資源の適正配置を実現してきた。しかし、水資源に関してはこうした法政策的動向から取り残され、結果として深刻な水不足や水汚染を招来するに至った。そこで、2000年以降、中国各地において水資源の適正配置を実現すべく、水をめぐる権利について、公共性を維持しつつ財産権化(用益物権化)し、これを市場において適切に取引する法政策が実施されるようになった。 今年度の調査研究では、黄河および黒河流域における最新の事例に焦点を当てて、現地でヒアリング調査を行い、また中国語の関係文献の検証から、中国甘粛省黄河および黒河流域における「流域水財産権」という新しい権利概念とその流動化の動向について新たな知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近年、中国では現役官僚と外国人が接触することが大幅に制限されており、今回も予定していた一部のヒアリング対象者からキャンセルがあった。しかし、ヒアリングをすることができた対象者から、さらに歴史学や社会学を専門とする研究者を紹介してもらうことができ、その結果、清朝時代にまでさかのぼる水利取引をめぐる慣行の存在や土地改革に伴う非公式な水利改革が農村で実施されていた史実を確認することができ、予定以上の成果を得ることができた。また、現地で入手できた論文等の文献から、中国の乾燥地帯で実験的に行われてきた水利取引が、全国規模で拡大されようとしていることも検証できた。以上から、本研究は、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
中国での研究調査が順調であったことを受けて、平成27年度に実施した研究手法を今年度も踏襲してオーストラリアでの水取引と水市場形成に係る研究調査を実施したい。オーストラリアでは、すでに多くの文献資料が公刊されているので、これらを事前に講読して問題点を整理したうえで、現地でのヒアリングや視察に結び付け、問題の解決がどのように行われているのか否かを確認したい。
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Research Products
(19 results)