2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H05175
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Research Institution | Takushoku University |
Principal Investigator |
奥田 進一 拓殖大学, 政経学部, 教授 (60365864)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮崎 淳 創価大学, 法学部, 教授 (30267489)
守田 優 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (70210177)
柳 憲一郎 明治大学, 法務研究科, 専任教授 (80132752)
黒川 哲志 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (90268582)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | マーレー・ダーリン川 / 水利権取引 / オーストラリア連邦水法 / マーレー・ダーリン川流域計画 / 持続可能な流量限界 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、オーストラリアのマーレー・ダーリン川の流域管理及び水利権取引の実態と問題点について、在豪日本大使館の協力の下、オーストラリア国立大学法学部、オーストラリア連邦政府農業・水資源省、マーレー・ダーリン川流域管理庁、南オーストラリア政府 第一次産業・地域省、南オーストラリア政府環境・水資源・天然資源省への聞き取り調査を中心に行った。 マレー・ダーリン川流域における水利権改革(近年では、オーストラリアの他の地域においても類似の改革が行われている)は、水利権が一般に広く取引され得る対象であり、かつそれは土地に関する権限に付随しない点に特徴があることが明確になった。各州は、水利権を土地からも他の経営体からも関連付けられないものとして扱っている。つまり、水利権は土地と切り離して取引でき、放水や貯水の権利から、「水にアクセスする権利」を切り離すことによって実現している。 また、各州政府は、水利権者が他の水利用者に対して、一定の期間、水利権を貸し出すことを認めている。一般的には、分配取引と呼ばれる、水利権を一時的にある季節だけ取引する方法が行われている。一定期間の貸出と一時的な分配は、どちらも所有権は元々の水利権者に残っているが、水の利用権は被分配権者または一定期間の借り手に付与される。このような水取引市場の存在は、個々の事情に合わせた柔軟かつ多様な水利権取引を可能にしてる。とりわけ、マレー・ダーリン川流域における水利権取引は、農産物生産者が自らの農場経営や事業モデルを調整するのに役立っており、また、水不足や農業生産物の価格変動、気候変動等の問題に柔軟に対応する際にも重要であるという。 今年度の研究調査では、既往文献の精査に加えて、現地機関や研究者への聞き取り調査を行うことで、上記のような詳細かつ最新の情報を収集および分析することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初、今年度は、オーストラリア国立大学および連邦政府農業・水資源省への聞き取り調査を軸に、オーストラリアの水取引に係る法整備状況の調査を予定していた。そこから明らかにされるのは、水権(水アクセス権)の内容や水取引を行う水市場を全土に普及させた制度内容の詳細および2008 年連邦水法において行われた様々な水管理制度の改革の施行状況であった。 今年度の調査では、上記の内容はもちろんのこと、在外公館の多大なる協力のもと、南オーストラリア州政府やマーレー・ダーリン川流域管理庁への密な取材も可能となり、水利権賃貸借や水利権担保制度など、既往研究からは知ることのできなかった新しい制度実態の情報を、詳細かつ広範に入手することができた。 以上から、今年度の研究に関しては、当初の計画以上に進展していると思料するものである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、EU水枠組み指令を受けて国内法化に取り組んだ欧州諸国のうち、従前より民間の水管理システムを有していたドイツの事例について、現地調査を軸に研究を進める。なお、当初計画では、官民連携によって流域管理を行っているフランスの事例についても調査する予定であったが、大統領選挙等の影響により行政担当官とのアポイントがうまく取れなかったため、フランスに関しては平成30年度に調査を延期することにした。 ドイツは、デュッセルドルフ近郊のルール水組合を訪問して調査する。ルール水組合は、法に基づく強制的な会員資格を基礎としており、19世紀後半の急速な工業化に伴って起こった深刻な利水紛争と水質汚染問題に端を発して設立されたルール川貯水池組合とルール水組合が法律によって1990年に一本化されたものであり、一定の成果をあげている。この法律はRuhrverband法とよばれ、本調査では当該法が果たした機能について明らかにする。また、ボン市水・土壌管理局も訪問して、水汚染防止と都市緑化をめぐる行政施策や地下水資源管理に係る法政策動向について聞き取り調査を行う。 現地調査に先立ち、既存文献による勉強会を4回実施する。現地調査の後は、その結果を踏まえて流域管理を可能にしている法制度の概況を明らかにし、これらの知見をまとめるための研究会を2回実施する。 このほかに、平成28年度の研究調査において収集したオーストラリアの水資源管理法政策について、これらを取りまとめてブックレットとして刊行する予定である。
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Research Products
(6 results)