2016 Fiscal Year Annual Research Report
内陸地震の発生過程の解明-ニュージーランド南島北部における稠密地震観測による-
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15H05206
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
飯尾 能久 京都大学, 防災研究所, 教授 (50159547)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 知己 東北大学, 理学研究科, 准教授 (30281968)
松本 聡 九州大学, 理学研究院, 准教授 (40221593)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 内陸地震 / 水 / ニュージーランド / 断層 / 観測 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年12月14日に観測網内において2016年カイコウラ地震(Mw7.8)が発生した。この地震は10枚程度の断層が関与している地震観測史上最も複雑な地震だと言われている。定常地震観測網が約100kmおきにしかない地域であるため、本研究による臨時観測網が極めて重要な役割を担っている。GNSなど現地の研究機関だけでなく、世界中から期待が寄せられている。カイコウラ地震の発生直後に、2回目のメンテナンスの予定を繰り上げて、データ回収等を行った。余震域付近の観測点へ通ずる道路は、地震による土砂崩れ等のため通行不能のところが多かったが、年明けまでに、全ての観測点のメンテナンスを行うことが出来た。余震域直上には5観測点があり、本震発生に至る貴重なデータを得ることが出来た一方、極めて大きな地震だったため観測点近傍でも土砂崩れが発生し、2観測点はそのために欠測となっていた。メンテナンスと同時に、クライストチャーチ付近の5観測点を撤収し、土砂崩れでやられた1点を含めて、カイコウラ地震の余震域内に移設した。それ以外については、2015年度に南島の北西端、Farewell岬周辺に設置した3点を含むニュージーランド南島北部の51カ所において地震観測を継続している。 これまで得られた地震データをニュージーランドの定常地震観測網であるGeoNetデータと統合して解析を行い、詳細な震源分布、メカニズム解、地震波速度・トモグラフィーを行った。その結果、低速度域が沈み込むプレートから低速度域が活断層の直下へ伸びていることが明らかになった。沈み込む海洋プレートから脱水した水が上昇して地殻に達し、下部地殻を局所的に「やわらかく」することにより、直上の断層に応力集中が生じて内陸地震が発生するという仮説と調和的な結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
臨時観測点は順調に稼働しており、詳細な震源分布、メカニズム解、地震波速度・トモグラフィーのためのデータが蓄積されている。このデータを用いた解析も進んでおり、期待されていた結果が得られ始めている。さらに、2016年12月に観測網内でM7.8という内陸大地震が発生した。対象地域内には多数の活断層が存在するため、大地震の発生可能性はあったが、予期していないものであった。本格的な解析はこれからであるが、この地震発生の解明だけでなく、本研究の主たるテーマの解析にも大いに役立つデータが得られたため、期待以上の成果が得られたと評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後もデータの蓄積を計るとともに、得られたデータの解析を進め、研究目的の達成を計る。2015年度に南島の北西端、Farewell岬周辺に設置した3点を含むニュージーランド南島北部の51カ所において地震観測を継続する。地震データは、日本において各観測点の波形をマージし、ニュージーランドの定常地震観測網であるGeoNetデータと統合して、イベント毎の波形ファイルを作成する。自動読み取り結果を手動で確認して、解析用の2次データを作成する。データ解析においては、詳細な震源分布、メカニズム解、地震波速度・トモグラフィーを行い、内陸地震の発生過程の物理モデルやカイコウラ地震およびクライストチャーチ地震の発生過程の解明に役立てる。主なターゲットは、カイコウラ地震とクライストチャーチ地震の震源域における応力場や不均質構造を推定し、これらの地震がなぜ起こったかを明らかにすることである。さらに、沈み込むプレートからアルパイン断層及び周辺の断層深部に向かって低比抵抗異常域が延びているが、地震波速度構造を詳細に推定し、内陸地震発生に関する物理モデルを構築することがもうひとつの主なターゲットとなる。
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Research Products
(1 results)