2015 Fiscal Year Annual Research Report
ボルネオ島泥炭掘削:過去4000年間の熱帯大気対流活動の復元
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15H05210
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山本 正伸 北海道大学, 地球環境科学研究科(研究院), 准教授 (60332475)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関 宰 北海道大学, 低温科学研究所, 准教授 (30374648)
林 竜馬 滋賀県立琵琶湖博物館, 研究部, 研究員 (60636067)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ボルネオ / 泥炭 / セルロース / 酸素同位体 / 古気候 |
Outline of Annual Research Achievements |
熱帯太平洋の大気対流活動はエネルギーを中高緯度へと伝搬する役割を果たしており,過去の大気対流活動を復元することは全球気候変動の機構の理解につながる.本研究では,ボルネオ島において泥炭コアを採取し,その植物片のセルロースの酸素同位体比を分析することにより,過去4000年間の降水酸素同位体比の高時間解像度復元を行い,大気対流活動の長期的変動を復元する.その変動の周期と振幅から,変動の起源と伝搬過程を考察する.また,草本類のセルロース酸素同位体比,花粉・胞子組成を分析することにより乾湿変動の変化を復元し,ボルネオ島の気候と大気対流活動との対応関係を検討する.さらに微粒炭量を分析することにより,焼き畑農業の歴史を復元する. 平成27年度は,ボルネオ島サラワク州のマルディー地域とティンバラ地域でコアリングを行い,9m前後のコアを採取した.また,マルダム地域とロ^ガンブヌート地域の下見を行った.採取したコアについて記載,含水率の測定,植物片の分画を行った.さらに放射炭素年代測定,セルロース抽出作業を進めている. 現地でのコア記載,実験室での観察から,マルディー地域の泥炭は葦遺骸と根遺骸,葉遺骸を主体とすることが分かった.葦遺骸の割合は時代により大きく変化することが明らかになった.ティンバラ地域の泥炭は葦遺骸と根遺骸,葉遺骸,炭を主体とすることが分かった.葦遺骸と炭は交互に出現した.葦が卓越する湿潤な環境と野火が起きやすい乾燥した環境が繰り返した可能性が示唆された マルダム地域の下見により,当地域の泥炭は分解が進んでおらず,当研究の目的に適した試料が得られそうであることが分かった.ローガンブヌート地域の下見により,当地域の泥炭は洪水起源の泥を挟んでおり,コアを採取,解析することにより洪水史の復元が可能になることが考えられた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通りにコアを採取できただけでなく,より研究目的にあった掘削地点が明らかになり,また洪水史復元の可能な掘削地点も明らかになった.
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は,マルディー地域とティンバラ地域の泥炭コアの放射炭素年代測定とセルロース抽出,酸素同位体比測定,花粉分析,炭分析を行い,ボルネオ大気循環変動に関する予察的結果を得ることを第一の目標とする.サラワク州クチンで開催される第15回国際泥炭会議に出席し,予察的成果を発表するとともに,熱帯泥炭に関して情報交換を行い,研究に役立てる.マルダム地域とローガンブヌート地域において泥炭コアを採取し,記載,含水率測定とそれにもとづくコア間対比,植物片の分画,放射炭素年代測定,セルロース抽出,酸素同位体分析,花粉分析,炭分析を進める.
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