2016 Fiscal Year Annual Research Report
The alteration of ecosystem and landscape due to mono-specific planting of mangroves and the improvement of the plantation method
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15H05219
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
浅枝 隆 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (40134332)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 雅利 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (20373376)
ラシッド エムディハルノオル 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (80643262)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | マングローブ植林 / 栄養塩ストレス / 海岸生態系 / 海岸保全 / 活性酸素 / 環境ストレス / 過酸化水素濃度 / Rhizophora stylosa |
Outline of Annual Research Achievements |
セブ市沖に位置するオランゴ島、バナコン島では、単一種Rhizophora stylosaによって植林が行われ、植林後の生存率が極めて高いことから、極めて密なマングローブ林が形成されている。前年度まで、25㎝間隔で植林が行われる、植林の方法自体に問題があるという前提の下、密に植えられたマングローブ林の有する問題点の究明を行ってきた。他方、植林場所によっては、植林されたマングローブの苗木の大部分が枯死してしまうところも多い。こうしたことから、植林後の生存率の差をもたらす原因の解明、また、生存率の予測自体が重要な要素になっていると考えた。こうした背景の下、平成29年度には、マングローブ種の生育にとって、好ましい環境の把握を求めることに費やした。 従来、こうした植物の生育環境は、植えた後に定期的に行われる、生存率や生長量についてモニタリングによって得られる。ところが、特にマングローブの場合、生長が遅いことから、この結果を得るために数年‐10年程度の長いモニタリング期間が必要になる。こうした生態学的手法に代わる、より短時間で評価が可能になる手法を開発する必要がある。このため、マングローブの樹木個体が、環境からストレスを受けた場合に、そのストレス強度に応じて細胞内に発生する活性酸素量を用いて、環境ストレス強度を評価、その高低によって、生存率の評価を行うことを考えた。活性酸素としては、最も多くの組織で発生する過酸化水素を利用することとした。現地で、様々な環境傾度の下に生育するRhizophora stylosaの葉のサンプルを採取、過酸化水素濃度を測定した。その結果、平均潮位からの比高には負の効果が、日射量との間には正の効果といった、明瞭な傾向が得られた。こうした結果から、過酸化水素濃度は極めて適切な指標となり得ることが得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度まで、植林されたマングローブの生存率が高い場合、植林にはRhizophora stylosaが用いられる場合が多く、単一種のマングローブ林が形成されることや、その弊害、他の種の植林法の開発などを目的として研究を進めてきた。その結果、一旦、単一種のマングローブ林が形成してしまうと、他種の侵入は大きく阻害されること、Rhizophora属の場合、60年程度を経ても、2000個体/haに落ち着き、多様性の低い、極めて密で一様なマングローブ林が形成されること、その下では、景観が損なわれるだけでなく、個々の個体は大きなストレスを受けており、樹高は高いものの細く、高潮災害等には、必ずしも有効に機能し難いこと等の結果が得られた。こうした状況を回避すべきことはいうまでもない。ところが、植林後の生存率の予測が極めて難しいことから、現実の場では、こうした植林は計画段階で不可能であることが明らかになった。そのため、平成29年度には、この状況を克服する技術の開発を行った。従来、こうした植物群落の生長予測には、長期間をかけて、個体数や生長量をモニタリングすることが行われる。ところが、特にマングローブの場合、生長が遅く、これには非常に長い期間を必要とする。これに対し、本研究では、マングローブ個体(葉)に含まれる活性酸素量を測定するだけで、その個体が環境から受けているストレスの強度の評価手法の開発を行った。現地で、比高傾度に沿って生えているRhizophora stylosa個体の葉のサンプル、また、一日のうちで日射量の異なる時期のサンプルに対して適用したところ、極めて明瞭な傾向が得られた。以上より、極めて新しい手法を開発できた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度には、比高及び日射といった現地の環境ストレス傾度の下でRhizophora stylosaの葉のサンプルを採取、過酸化水濃度を測定、Rhizophora stylosaの生育にとって好ましい環境条件を把握することを行い、この過酸化水素濃度を用いて評価する手法が極めて有効に機能し得る可能性を得た。この手法は、マングローブの植林だけでなく、絶滅危惧種にとって再生しやすい環境の把握、駆除対象の植物にとって生育し難い環境の把握等、様々な利用が可能な、応用範囲の広い技術である。この手法の確立を目指した技術開発が必要である。 マングローブ植林に関しては、次の点での評価が必要になる。1)マングローブは耐塩性の高い植物群ではあるが、必ずしも塩分を好むというわけではない。塩分濃度傾度に対し、実験を行い、好ましい塩分濃度の把握、2)マングローブは潮間帯に生えることから、多くの場合、1日のうちで何時間かは冠水する。どのような冠水時間が生育にとって最も好ましいか、3)一日のうちで、どの時間帯がストレスが高く、どの時間帯か低いかといった、一日の中での変化、4)マングローブ植林において、これまでRhizophra stylosaが植林後の生存率が高いために、この種ばかりが植えられてきた経緯があるものの、異なる環境条件であれば、他の種も高い耐性を有している可能性も考えられる。種ごとに、上記のような環境傾度のうちで、どのような条件が好ましいか得る必要がある。
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Research Products
(2 results)