2015 Fiscal Year Annual Research Report
タイ国チャオプラヤー川流域における国情に合わせたダム貯水池群の最適運用方法の開発
Project/Area Number |
15H05222
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Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
手計 太一 富山県立大学, 工学部, 准教授 (70391620)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
呉 修一 東北大学, 学内共同利用施設等, 助教 (00646995)
宮本 守 国立研究開発法人土木研究所, その他部局等, 研究員 (80391621)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 貯水池運用 / 最適化 / 流域管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,タイ国チャオプラヤー川流域を対象として,利水と治水の両方に効果が得られ,かつ現場での運用が簡便である貯水池操作方法を提案することを目的とした.本研究課題で対象としているプミポンダム貯水池とシリキットダム貯水池における現業の貯水池操作規程は,貯水量をULCとLRCの間に保つように貯水操作するものである.発電のための最低放流量や灌漑用の放流量が規定され,さらに乾期を迎える12月31日時点で満水に近い貯水量が望まれているため,非常に難しい運用を強いられているのが実情である. そこで,本研究では既存のルールカーブを利用して,前日貯水量に応じて日放流量を決定する極めてシンプルな運用方法を提案した.その方法を以下に示す. まず,一日ごとの日放流量を前日の貯水量から決定する.日貯水量は以下のように定義する.次に,日放流量を決定するため,新ルールカーブを基に5つの閾値を設定した.これらの閾値は操作の簡便性のために,日ごとに設定するのではなく月一定に設定した値を用いる.次に,日放流量を決定するために新ルールカーブを基に6段階に決定する. 提案した放流操作を過去の貯水池データに適用してその妥当性を検証した.解析期間は,プミポンダム貯水池では1964年6月1日~2012年12月31日,シリキットダム貯水池では1974年1月1日~2012年12月31日である. 本研究で提案した操作方法は,前日貯水量に応じて日放流量を決定する極めてシンプルな運用方法である.また,本研究のもう一つの特徴は,提案した放流操作を過去に貯水池運用された全期間を通して適用することで,長期間の貯水池運用の妥当性を検証したことである.本研究の結果,本提案手法は2つの大規模ダム貯水池において,貯水量を安定してルールカーブ内に保つ事ができた.貯水量が安定することは長期的な渇水や頻度の高い洪水の抑制に繋がる.しかし,2011年のような50~100年規模の大洪水に対応できていない.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
貯水池流入量の実績データのみから,利水・治水の両面に配慮した新しい貯水池運用を提案し,実際の運用よりも大幅に良い運用結果であった.本研究で提案した操作方法は,前日貯水量に応じて日放流量を決定する極めてシンプルな運用方法である.また,提案した放流操作を過去に貯水池運用された全期間を通して適用することで,長期間の貯水池運用の妥当性を検証したことである.本研究の結果,本提案手法は2つの大規模ダム貯水池において,貯水量を安定してルールカーブ内に保つ事ができた. さらに,河口からAngthonまでの河川縦断測量,流況の観測を実施し,解像度が非常に細かい河床データを作成することに成功した.これらのデータは,今まで誰も計測したことのないものであり,非常に貴重である. 以上から,大きく進展した部分と計画通りであった部分を合わせて,概ね順調に進展していると自己評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では貯水量によって運用法を評価したが,下流域への影響は十分に評価できてはいない.今後は著者らのグループが既にチャオプラヤー川に実装している降雨流出モデルを用いるとともに、下流域の渇水時の水需要量を算定することで、本研究で提案する放流を行った場合の、下流域での洪水・渇水状況等を詳細に評価していきたい. 本研究で提案した運用法では貯水量のみから放流量を決定したが,今後はより現実に則した提案にするために,貯水量の上限の設定や雨期・乾期別の操作方法の導入を行う必要がある. 河口から500km程度まで河道の簡易測量をさらに実施し,河道貯留量を算出したい.また,対象とするダム貯水池形状の経年変化を検討する.
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Research Products
(5 results)