2015 Fiscal Year Annual Research Report
世界遺産組積造建造物の耐震性評価に関わる非破壊調査法の展開
Project/Area Number |
15H05224
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
花里 利一 三重大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60134285)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上北 恭史 筑波大学, 芸術系, 教授 (00232736)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 組積造建造物 / 世界遺産 / 耐震 / 非破壊調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、世界遺産組積造建造物の耐振性評価に関する下記に挙げる研究課題について、文化財建造物の構造調査の原則である非破壊調査法を学際的かつ国際的な体制で展開し、耐震性評価に関わる基本的な知見を得るとともに、その成果に基づいて国際的な技術指針を提示する。 ①マッシブな壁構造を有する組積造建造物の地盤との動的相互作用 ②組積造建造物の水平構面剛性の耐震性向上効果 ③耐震性に影響する要因である材料の経年劣化や変形・過去の災害による損傷の評価 平成27年度は、研究の初年度として、研究実施計画に従い、ギリシャ・世界遺産ビザンチン教会堂の微動測定、ギリシャ・パルテノン神殿の歴史火災による損傷評価、同神殿の地震モニタリングの継続、2013年10月の地震を受けたフィリピン・ボホール島におけるバロック石造教会の構造材料および微動調査を実施した。さらに、国内においては史跡仇岬砲台(神戸市)における地震モニタリングも継続して実施している。目的①に示した地盤と建物の動的相互作用に関しては、フィリピン・バロック石造教会、ギリシャ・ビザンチン教会堂の微動測定結果に動的相互作用の影響がみられることを確認した。また、史跡和田岬砲台の地震時挙動にも動的相互作用の効果は明確にみられる。目的②に示した水平構面剛性の効果については、ギリシャ・ビザンチン教会堂の微動測定結果により、一定の効果があることを確かめた。目的③に示した材料劣化・過去の災害による損傷の評価では、パルテノン神殿の歴史火災による損傷評価のために、大理石材料の加熱試験および熱伝導・熱力学解析を行い、火災による損傷のメカニズムを検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の目的に対しては、だいたい満足する成果を得ることができたが、研究計画の実施面で次年度に持ち越された内容もある。 研究目的①マッシブな壁構造を有する組積造建造物の地盤との動的相互作用については、常時微動測定により動的相互作用効果を確認した。 研究目的②組積造建造物の水平構面剛性の耐震性向上効果については、常時微動測定によって一定の効果があることを確認した。研究目的③耐震性に影響する要因である材料の経年劣化や変形・過去の災害による損傷の評価については、パルテノン神殿の歴史火災による損傷のメカニズムを解析的に評価した。 平成27年度は、目的①、②、③について解析的なアプローチも検討し、とくに、③ではパルテノン神殿の歴史火災による損傷について解析を実施している。 平成27年度計画に挙げながら未実施であった内容は下記のとおりである。 研究計画では、ギリシャ・パルテノン神殿に地震計を増設する予定であったが、既設地震計の不具合問題のために、増設・観測が実施できなかった。また、インドネシア・ボルブドール遺跡におけるモニタリング機器の設置に関しては、インドネシア政府の許可に期間がかかったこと、雨季ではなく、乾季(5-9月)に設置することが望ましいため、平成28年度に設置することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
研究目的①マッシブな壁構造を有する組積造建造物の地盤との動的相互作用については、地震モニタリングを継続する。解析モデルに関しては、動的相互作用現象を考慮できる解析モデルとして、多質点系モデルおよび有限要素モデルを挙げ、動的相互作用によって減衰性能が増大することを解析および実測に基づいて検証する。また、ルーマニア世界遺産中世教会堂の現地調査を行なう。 研究目的②組積造建造物の水平構面剛性の耐震性向上効果については、地震モニタリングにより実証的に検証する。また、適切な解析モデルの検討を行う。 研究目的③耐震性に影響する要因である材料の経年劣化や変形・過去の災害による損傷の評価については、引き続き、パルテノン神殿の歴史火災による損傷評価に関して、非破壊調査の適用性も含めて検討を進める。
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Research Products
(3 results)