2016 Fiscal Year Annual Research Report
スウェーデンのVega号資料に基づく明治初期の日本研究と琵琶湖環境の復元
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15H05234
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
滝川 祐子 香川大学, 農学部, 協力研究員 (40532932)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ヴェガ号 / 明治期の日本研究 / 探検航海 / 琵琶湖生物相 / 生物多様性 / 長期的生物相の変動 / 保全生物学 / 自然史博物館 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ストックホルムのスウェーデン国立自然史博物館に現存する、Vega号の探検隊が科学的調査を目的として採集した、日本産の水生生物標本の調査及び種の同定を行うことである。ノルデンショルドが率いたVega号は、1879年に来日した際、生物相の調査を目的として、日本産の水生生物標本を収集した。『ヴェガ号航海誌』の中にも、横浜、神戸、長崎の3箇所の寄港地を拠点としつつ、広範囲から生物標本を採集したことが記録されている。日本の採集地を大きく分けると、関東、関西、長崎周辺となる。本研究は、3年計画で、次の3点を明らかにすることを目標とする。1)特に琵琶湖産の魚類及び水産無脊椎動物標本を分類整理し、当時の生物相を把握すること、2)生物相の特徴から、明治初期の琵琶湖の環境や生態系を復元し、その後の長期的な変遷をも明らかにすること、3)ノルデンショルド収集の標本や関連する文書資料から、日本の生物相に対する西欧の関心を科学史的に評価することである。平成28年度は研究2年目であり、平成27年度の調査結果を踏まえ、研究代表者である滝川祐子、水生昆虫の専門家である石綿進一、ヒルの専門家である中野隆文の3名がストックホルムの自然史博物館を訪問し、現地調査を実施した。昆虫標本については、前回の調査で、琵琶湖のヨコエビ標本に水生昆虫の幼生が混入しているのを確認していた。そこで、今回の現地調査では、その幼生を詳細に観察した結果、シロタニガワカゲロウと種を同定することができた(石綿)。本種は琵琶湖の南湖における初記録となる。その他、昆虫標本として甲虫(乾燥標本)やトンボ目の幼虫(液浸標本)が存在することが分かったため、それらを調査資料に加えることが可能となった。 また国内外の研究機関において、ノルデンショルドの日本の学術調査に関する文献を収集した(滝川)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究2年目である平成28年度は、前年度の調査結果を踏まえ、スウェーデン国立自然史博物館において、無脊椎動物、特にヒル類、及び昆虫の調査を実施することができた。その結果、ヒルについては、芦ノ湖、琵琶湖、富士山麓を産地とする標本が収集されていたことが判明した。これらの標本の種の同定を行った(中野)。昆虫については、現地調査を行うことで、標本として甲虫(乾燥標本)やトンボ目の幼虫(液浸標本)が存在することが分かった(石綿)。 このように、専門家を現地に派遣し、標本調査を実施し、種の同定を実施した。加えて、訪問によって現地学芸員が新資料を発見することにつながり、研究を進展させることができたので、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる平成30年度は、更に貝類とヨコエビの専門家を現地に派遣し、調査を実施する予定である。琵琶湖産の貝類標本に混在していた藻類標本を貸借し、日本国内の専門家に種の同定を依頼中である。 今後は本研究で得られた成果を学会(2017年度日本魚類学会年会等)で発表するとともに論文として公表することを目指したい。研究成果の一部で、琵琶湖産の生物標本に関する調査結果は、連携研究者が編者である英文の学術書Lake Biwa第2版に、魚類、ヒル類、貝類、昆虫類を中心に執筆予定である。 本研究によりVega号が収集した明治初期の生物標本資料の意義と学術的価値を明らかにし、公表していくことが今後の課題である。
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Research Products
(1 results)