2016 Fiscal Year Annual Research Report
食料生産と資源競合することなく農業者の所得向上に貢献できる工芸作物生産体系の確立
Project/Area Number |
15H05244
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡田 謙介 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (80391431)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 薬用植物 / PSM / 土壌分析 / 生物多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
資源が逼迫している現在、食料生産と資源競合しない農業生産体系の確立が重要である。本研究では、そのために薬用植物の生産を例にとり、(1)厳密な圃場実験により、食物生産と資源競合を起こさずに農家の所得向上に貢献するための薬用植物の最適な栽培方法を導出するとともに、(2)導出された新技術が、どのような特徴を持った農家に対してどのくらい所得効果をもつのかについて、最新のプログラム評価の手法を応用し正確に計測することを目的としたものである。 平成28年度は、博士課程大学院生が7月13日から8月24日まで、また1月8日から2月24日までインドグジャラート州に出張し、共同研究者であるグジャラート大学St. Xavier College副学長のProf. Lancy D’Cruzと研究打ち合わせを行ったのち、調査地であるDediapada町に滞在して周辺の対象村落における訪問調査を実施した。また教員と修士2年生が短期で現地を訪問し、主に農業地の土壌調査を手伝った。 現地では、もともと森林にある薬用植物をホームガーデンや農地の空地(あるいは境界線上)に栽培することによって、有用植物の絶滅を防ぐとともに農家の現金収入と生活の質の向上をめざすプロジェクトを推進している現地NGOと協力している。本年度はそのメンバー家族のアンケート調査について、昨年度に終わらなかった村落について補充調査を実施した。また現地で採集した土壌試料の分析をデリーにあるインド農業研究所(IARI)土壌植物分析研究室に依頼しそのデータを入手した。58地点のデータではおおむね砂壌土~埴壌土でありpHは6.0~8.3と好条件であるが、可給態窒素およびリンは低く施肥の必要性が認識された。訪問調査後、村のカウンターファクチュアルを抽出するためにPropensity score matchingの分析を実施中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地での対象とする植物の記載およびその農家での利用の実態、植物の好適環境特性については十分なデータを収集し終わり、現在や生存率を従属変数、土壌分析値、日射等の環境を独立変数とした多変量回帰分析を実施中である。現地に長期で滞在することが難しい状況において、これらの分析をもって植物の生育実験の代替とする。農家経済調査については計画以上に進展し、NGOのメンバー各農家の家計調査および薬用植物の生産・利用に関する実態および選好に関する調査が終了した。非介入分析においては傾向スコアマッチング法実施のために、対象村落の住民登録記録の入手とそのデータ入力および分析についてもほぼ終了しており、そのデータの分析中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、農業生産体系に薬用植物栽培を組み込んでいない農家の抽出を行ったのち、現地に再度に2ヶ月程度滞在して、そのインタビュー調査を実施し、農家固定効果を厳密に排除した上での研究対象地域における薬用植物の平均所得効果を算出する。また傾向スコアの算出過程を再分析することにより、薬用植物を栽培している農家の社会経済特性および地理特性を明らかにする。一方薬用植物の生理生態特性についての論文を執筆する。
|
Research Products
(2 results)