2015 Fiscal Year Annual Research Report
熱帯アジア水田における緑の革命50年の土壌肥沃度への影響評価と稲作生産力の再評価
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15H05247
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
矢内 純太 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (00273491)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 壮太 高知大学, その他の研究科, 教授 (10304669)
阿部 進 近畿大学, 農学部, 講師 (40708898)
中尾 淳 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 助教 (80624064)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 水田土壌 / 肥沃度 / タイ / 緑の革命 |
Outline of Annual Research Achievements |
「緑の革命」によって過去50年間に普及した多投入型集約農法の水田土壌への影響を定量的なデータによって明らかにするとともに、ポスト緑の革命に向けて、熱帯アジア水田のもつ稲作生産力を再評価することを研究目的として、初年度である2015年度は、熱帯アジアのうちで緑の革命の導入時期の遅かった後発国であるタイにおいて、およそ50年前の土壌調査の追跡調査を実施した。すなわち、2015年の夏および2016年春に都合3回のタイ出張を行い、50年前の調査地のうち現在でも水田の残る北部・東北部・中央部タイの合計65地点において、水田土壌表層土の試料採取を行い、あわせて現状を管理の面から解釈するために、現在の土壌管理・肥培管理について当該圃場の農家へのインタビューを実施した(総移動距離は6,000km程度)。また、採取した土壌試料について、50年前の Kawaguchi & Kyuma(1977)と同一の手法を用いて、土壌肥沃度の一般項目の分析を行うための基礎的検討として、標準土壌の共有と、pH、EC、全炭素、全窒素(湿式分解法)、可給態リン(ブレイ準法)、交換性塩基(酢安抽出法)などの分析方法の確認と、同一試料を用いた分析データのすりあわせを実施し、その後今回採取した土壌の分析を随時進めた。さらに、中・近赤外分光特性の分析を標準試料を用いて行い、試料調製法ならびに分析条件の検討を行い、土壌の理化学データを中・近赤外分光特性によって推定するための基礎情報を集めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の当初の計画では、土壌調査はタイとバングラデシュの2ヵ国で合計100試料のサンプリングを予定していたが、タイの土壌試料採取がタイ全土の広域にわたるため都合3回の調査が必要であったため、またバングラデシュでの土壌調査は、現地まで出向いて過去の水田土壌調査に関する情報を収集したが、50年前の地点に再び戻るための航空写真画像の解読などがうまく進まずかつ現地の治安状況も必ずしも安心できるものではなかったため実施することができず、結果としてタイ1ヵ国での調査となった。しかし、両国とも「緑の革命」後発国のため、タイ1ヵ国を精緻に再調査したことで、後発国の状況は十分評価できるものと考えている。一方土壌分析については、標準土壌の確認と方法論の詰めが終了し、実際の試料の分析数は予定よりもやや少ないものの、この点については来年度に十分取り戻すことが可能であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、「緑の革命」の先進国である、フィリピンとインドの土壌調査を計画中である。フィリピン、インドともに、地域によっては治安状況に不確定要素があるものの、現地のカウンターパートと十分な情報交換を行いながら、適切な判断を行っていきたいと考えている。少なくとも1ヵ国で精緻な土壌調査およびサンプリングが行えれば、研究目的は十分に達成できるものと考えられる。また、土壌試料の分析については、事前の問題検討はすべて終了しており、計画に従って順調に進める予定である。
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