2015 Fiscal Year Annual Research Report
微生物機能・安定同位体比分析に基づくベトナム中部沿岸地域の地下水窒素汚染機構解明
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15H05255
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
前田 守弘 岡山大学, その他の研究科, 教授 (00355546)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近森 秀高 岡山大学, その他の研究科, 教授 (40217229)
井上 大介 北里大学, 医療衛生学部, 准教授 (70448091)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 窒素 / 地下水汚染 / ベトナム / 安定同位体比 / 国際情報交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
ベトナム中部沿岸ラグーン周辺の農業地帯では地下水のアンモニア態窒素濃度が高い.これは一般的な地下水汚染が硝酸態窒素であるのに対して,特異な現象である.汚染原因として,同地域では窒素投入量が多い野菜栽培が盛んであること,農村の家庭排水,し尿処理,家畜ふん尿処理が不十分であること等が考えられる.本研究では,現地研究者と協働し,分子生物学的手法による網羅的微生物機能解析および化学形態別窒素安定同位体比分析など最新技術を用いて,ベトナム中部沿岸地域における地下水汚染機構を解明する.次いで,解明した汚染機構を編入した野菜畑窒素溶脱モデル,地下水流動モデルを開発し,現状での将来予測および改善シナリオを提示することでベトナム現地での食料生産と環境保全の調和に資する. 本年度は,2015年6月,7月,10月に,Huong川下流に位置するQuang Dien県Quang Thanh社の7農家ならびにPhu Vang県Phu Mau社の3農家の圃場および地下水を調査した.その結果,Quang Thanh社の地下水はNH4-N濃度が高く,特に民家隣接圃場でより高濃度であることがわかった.一方,Phu Mau社ではNO3-N濃度が高く,Quang Thanh社とは異なる地下水流動機構が予想される.また,土壌微生物群の窒素循環機能解析に係る諸条件を検討して,活性試験法やDNA抽出・精製法を整備するとともに,一部の土壌に対して硝化機能の把握を行った.さらには,地下水流動モデルに関するデータ収集を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査地の選定,同位体分析手法の確立,微生物群集機能解析条件の検討などほぼ予定通り研究が進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度は,昨年度に続き,参画研究者および研究協力者が乾季および雨季にラグーン周辺農地を踏査し,農家および村役場から圃場管理,地下水利用に関する情報を収集する.また,調査対象地区・圃場において,乾季,雨季における土壌および地下水を採取する. 具体的内容は以下の通りである. サブテーマ1(各種活性試験および分子生物学的手法を用いた窒素循環機能の網羅的解析)では,各種解析に係る諸条件を確定し,各種活性試験やマイクロアレイ法等を用いて,乾季及び雨季における微生物群の窒素循環機能の網羅的解析を行う. サブテーマ2(化学形態別窒素安定同位体測定に基づく農地・地下水系における窒素動態および地下水のNH4-Nの由来解析)では,土壌・水環境調査を継続するとともに,形態別の窒素安定同位体比の結果から,地下水中における脱窒などの窒素動態を明らかにする. サブテーマ3(窒素溶脱モデルSOILN-jpnによる野菜畑からの窒素溶脱評価)では,現地調査で得たデータ,パラメータをSOILN-jpnに適用し,現地の肥培管理が窒素溶脱に与える影響を解析する.また,窒素溶脱と地下水NH4-N汚染との関係を明らかにする. サブテーマ4(沿岸農業地域における地下水流動モデルの開発)では,研究協力者Thang博士の協力のもと,引き続き,関連する過去の水文気象データ等を収集する.また,APHRODITEの研究対称流域におけるデータベースを用いて,地下水流動シミュレーションを行い,観測データと比較することにより,統計的特性を調べ,将来予測のために必要なバイアス補正を行う.次いで,対象流域であるフォーン川で観測されている水位データと雨量データに基づき,タンクモデルなどの降雨-流出モデルを利用して,地下水涵養源となる河川の流量推定を行う.
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Research Products
(4 results)