2016 Fiscal Year Annual Research Report
アジア・アフリカの研究者との連携による重要家禽疾病の疫学調査研究
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15H05260
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
小川 晴子 帯広畜産大学, 動物・食品検査診断センター, 教授 (10400079)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水谷 哲也 東京農工大学, 農学部, 教授 (70281681)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ウイルス / 感染症 / 疫学 / 進化 / 家禽 / 鳥インフルエンザ / ニューカッスル病 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、アジア・アフリカの研究者と協力して高病原性鳥インフルエンザおよびニューカッスル病について、疫学調査研究を行うことを目的としている。これら疾病は家禽に重篤な疾病を引き起こすばかりでなく、発生国に甚大な経済的被害をもたらす。経済発展を背景にアジア・アフリカの国々では畜産振興が続いているが、これら疾病の発生が続くことは大きな問題となっている。さらに、病原ウイルスが野鳥によって運ばれ得る越境性動物疾病であり、その制御は我が国を含む近隣の清浄国にとっても極めて重要である。 アジア・アフリカ地域に循環するウイルスについて、ベトナム、エジプト、キルギスの研究者らと協力し、それぞれの国の家禽飼養地域および野鳥生息地域において採集した検体から、ウイルスを分離し、遺伝子解析および抗原性解析を実施している。ベトナムの家禽から分離された高病原性鳥インフルエンザウイルスおよびニューカッスル病ウイルスの全遺伝子配列を解析し、詳細な解析を進めている。鳥インフルエンザウイルスについては、当研究室で作製したモノクローナル抗体を用いた抗原性解析も行い、分離ウイルスの抗原性の変化を把握しウイルスの進化について考察している。 検体中には、標的とするウイルス以外の病原体も含まれる可能性を考え、ウイルス分離にかける前の野外検体から遺伝子を分離し、次世代シーケンサーによる解析も実施している。さらに、飼養環境中の水などに含まれるウイルスおよびその他の病原体について、感度よくかつ効率的に解析する独自の手法の確立に向けて検討を進めている。環境検体からのウイルス濃縮法としてすでに確立された方法はあるが、アジア・アフリカの国々の野外で広く応用していくために、比較的容易にかつ経済的に実施可能な方法を開発したいと考え検討を進めている。これまでに標的ウイルスの濃縮に成功し、さらなる検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、ベトナム、エジプト、ブルキナファソの研究者らと協力した疫学調査研究を実施する計画であるが、これまでにベトナムおよびエジプトの研究者との共同研究が順調に進行している。ベトナムの国立獣医学研究所およびエジプトのサウスバリー大学とは、共同研究契約書及び材料提供同意書を取り交わし、現地での活動と海外検体の輸送が問題なく行われている。また、ベトナム国家農業大学、ブルキナファソ国立畜産獣医研究所との協力体制の構築も進行中である。現地と日本で行う作業、日本へ送る検体の種類などについて臨機応変に工夫し、効率良い研究体制の構築を目指している。当研究室の大学院生をベトナムへ送り込み、野外における検体収集や実験室内での検体処理について現地研究者と共に作業を行うことにより、国際交流と信頼関係位の構築も一層進んでいる。さらに、新たにキルギスの研究者との共同研究を開始し、同国の病鳥由来のニューカッスル病ウイルスを日本へ輸送し、解析を進めている。ウイルスに対するモノクローナル抗体の作出も進行中である。得られたモノクローナル抗体を用いることにより、ウイルスの詳細な抗原性解析が可能となり、ウイルスの進化に関する新たな情報が得られる見込みである。 現在、研究を進める上で留意すべき重要事項の一つが、海外生物遺伝資源の取扱いであるが、その点についても海外研究者と十分な情報交換を行いつつ進めている。各国の研究者らとは大学院教育、JICA研修などを発端として継続的で良好な協力関係が築かれており、計画に沿った調査研究が進行している。アジア・アフリカ方面への渡航については、近年特に治安や感染症などの問題が懸念されるため、大学院生などの現地派遣については慎重を期さねばならないが、十分に注意しつつ、効率的な研究の推進を図っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、これまでにエジプトおよびキルギスで採取した検体から分離したニューカッスル病ウイルスの性状をさらに詳細に解析する。各国における新たな検体からのウイルス遺伝子検出とウイルス分離も行う。それぞれの国で分離されたウイルスの全遺伝子配列を明らかにし、新たな遺伝子変異の探索を行う。遺伝子解析により抗原変異が予測されるウイルスについては、モノクローナル抗体を作製し、詳細な抗原性解析を行う。特に、様々な国でワクチン接種された家禽群にニューカッスル病の発生が報告されていることから、病原ウイルス株とワクチン株との抗原性の違いに焦点を絞り解析を進める。また、ベトナムの生鳥市場の飲み水などの環境検体をさらに収集し、鳥インフルエンザウイルスおよびニューカッスル病ウイルスをさらに効率的に濃縮する方法の確立を目指す。得られたウイルスの全遺伝子配列を解析し、ウイルス遺伝子の直近の祖先や進化について解析する。標的ウイルスを絞らずに家禽の飼養環境中に存在するウイルスを網羅的に解析する研究も進める。国内の他研究機関との連携も活用し、できるだけ多くのデータの蓄積を目指す。得られた成果を取りまとめて論文発表および学会発表を行い情報発信する。 今後の研究の継続のためにも、海外共同研究先の研究者と協力し、効率的かつ独自性ある疫学調査研究の方法の確立を目指す。海外で疫学調査研究を実施するための独自のマニュアルを作成し、標準化した方法を使ってアジア・アフリカ地域で実践する。得られた結果は、近年行なわれた調査研究の結果とも比較検証し、各国における家禽飼養環境の問題点を精査する。それぞれの国で発生しているウイルス感染症の現状を把握するばかりでなく、その制御のために鍵となる要因を洗い出し、アジア・アフリカ地域の家禽における感染症制御の一助となる情報の発信を目指す。
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Research Products
(11 results)
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[Journal Article] Characterization of avian paramyxovirus serotype 14, a novel serotype, isolated from a duck fecal sample in Japan.2017
Author(s)
Rapeewan Thampaisarn, Vuong N. Bui, Dai Q. Trinh, Makoto Nagai, Tetsuya Mizutani, Tsutomu Omatsu, Yukie Katayama, Tugsbaatar Baatartsogt, Dulyatad Gronsang, Duong H.T. Le, Haruko Ogawa, Kunitoshi Imai.
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Journal Title
Virus Res.
Volume: 228
Pages: 46-57
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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