2016 Fiscal Year Annual Research Report
モーリシャスサンゴ礁海水中に存在する天然ホルモン活性物質の同定
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15H05269
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
徳元 俊伸 静岡大学, 理学部, 教授 (30273163)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小谷 真也 静岡大学, 農学部, 准教授 (20510621)
鈴木 款 静岡大学, 創造科学技術大学院, 特任教授 (30252159)
CASARETO Beatriz 静岡大学, グリーン科学技術研究所, 教授 (60402244)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 天然資源 / ホルモン活性物質 / ステロイド膜受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らはモーリシャスサンゴ礁海水中に含まれる新規ステロイド膜受容体作用性の天然ホルモン活性物質の存在を始めて検出することに成功した。さらに、そのホルモン作用を細胞レベルで検出できるセルベースアッセイ法を世界に先駆けて開発した。これらの一連の研究成果に基づき本研究は以下の2つの事項を目的とする。(1)モーリシャスサンゴ礁海水中からの天然ホルモン活性物質の単離・構造決定(2)生物学的手法を用いた天然ホルモン活性物質の作用機序の解明 本年度は平成28年3月の採水において、モーリシャスサンゴ礁海水約1000 Lから、疎水性カートリッジの樹脂を用いた有機化合物の濃縮を行った。HPLCを用いた分析の結果、ナノグラムオーダーで活性を示す化合物を発見した。活性物質は疎水性化合物でありESI-MSの結果から910 Daの分子量であることが明らかとなった。しかしながら、1000 Lの海水中に約10-100 ngと微量に含まれるため完全な構造決定を行うためには、さらに100-1000倍の海水が必要となってくる。その点を踏まえると、現在遂行中の課題のやり方では対応できず、新たな戦略が必要となる。そこで、本年度のサンプリングはホルモン活性物質を分泌する生物種の特定を目的に行った。サンプリングポイントのサンゴ礁で優勢となっている生物種12種類について一昼夜飼育し、その間、海水成分をカートリッジに濃縮し、分泌されている物質を回収した。一方、その他の生物を含む17種については生体試料の抽出液を調製し、体内に活性物質が含まれるかどうか調べた。その結果、バイオマスの多い海藻とサンゴからアロステリック効果のある化学物質が分泌されていること、ウニの一種の体内に競合阻害効果を示す物質が存在することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はこれまで活性の検出された冬季に生物種を特定するためのサンプリングを行い、ホルモン活性物質を分泌する生物種についての情報が得られた。活性物質は予想通り優占種である海藻とサンゴが分泌していることが明らかになり、今後は飼育下での継続的なサンプリングを行うよう計画することとした。モーリシャス大学との関係も深まり、海洋生物の調査のためのサンプリング許可が得られ、大学施設を利用したサンプリングが可能となったことは大きな前進であった。
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Strategy for Future Research Activity |
より詳細な解析が必要ではあるが、活性物質を分泌する生物種を特定できた。構造解析に必要となる多量のサンプリングため次年度以降は生物の長期間飼育による継続的なサンプリングを実施する。必要な場合は現地でのサンプリングとモーリシャス大学での飼育、サンプリングを依頼する。今年度のサンプルについてもHPLCによる再分画を行い、活性画分の成分分析を進める。これらの取り組みにより構造決定に着手したい。
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Research Products
(2 results)