2016 Fiscal Year Annual Research Report
多体型マルコフ連鎖による超並列光伝搬シミュレーション
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15H05308
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
蜂須賀 恵也 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 講師 (00748650)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | レンダリング |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、前年度の成果を基にして、まずは既存の多体型マルコフ連鎖モンテカルロ法の光伝搬シミュレーションへの応用をコンピューターグラフィックスの分野におけるトップジャーナルの一つである、ACM SIGGRAPH Asia 2016に投稿した。論文はTechnical Paperプログラムに採択され、同学会での口頭発表を行なった。この研究成果は、密度推定法および経路積分法を統合する光伝搬シミュレーションの計算モデルを用いている。このモデルはモンテカルロ法による計算アルゴリズムだけが提案されており、マルコフ連鎖モンテカルロ法を適用した初めてのアルゴリズムを提案したのが、本研究の成果である。このアルゴリズムは、並列計算に適した多数のマルコフ連鎖を同時に使うアルゴリズムとなっている。 また、前年度の終わりに、多体型マルコフ連鎖モンテカルロ法は勾配空間における光伝搬シミュレーションと強く関連していることが分かったため、勾配空間におけるシミュレーションの新たな手法の開発を行なった。具体的には、これまでは勾配空間での計算は経路積分法のみに対応していたが、世界で初めて勾配空間における密度推定法を使った光伝搬シミュレーション手法を開発することに成功した。この成果は高く評価されている国際学会のEurographics 2017に投稿し、Full paperとしての採択が決まった。 さらに、マルコフ連鎖モンテカルロ法を用いた光伝搬シミュレーションの知見を生かし、従来は組み合わせることが出来なかった、パス空間と乱数空間とを統合する成果をトップジャーナルであるACM SIGGRAPH 2017に投稿し、Technical Paperプログラムに条件付採録となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、平成27年度の成果をGPUのような並列計算プラットフォームで効率的に実行できるようなアルゴリズムを、コンピュータグラフィックスの分野における高速計算の主要な学会である、High Performance Graphicsに投稿する予定であった。また、密度推定法と多体型マルコフ連鎖モンテカルロ法の組み合わせについての成果の投稿も予定していた。 実際には、どちらの側面も満たす成果がHigh Performance Graphicsよりも一般に高く評価されているSIGGRAPH Asiaに採択された。この学会はコンピュータグラフィックスの分野においてSIGGRAPHと同等の評価を受けており、また研究成果としても実用的に意義のある成果が得られた。 また、密度推定法については、マルコフ連鎖モンテカルロ法からは離れたものの、勾配空間でのシミュレーションを行なう世界初の手法を提案し、この成果もまた高く評価されている査読つき国際学会(Eurographics)で採択された。 さらに、マルコフ連鎖モンテカルロ法と光伝搬シミュレーションにおける知見の蓄積により、当初予定していた研究範囲を超えて、従来の定式化を統合する理論的にも実用的にも非常に意義のある成果が得られ、トップジャーナルであるACM SIGGRAPHに条件付採択が決まった。 これらを踏まえると、平成28年度は当初予定したよりも研究が発展し、その成果の論文としての発表も行なわれ、非常によく進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度では、これまでに得られた知見を基にして、多数のマルコフ連鎖が並列かつ強調動作するアルゴリズムの開発を引き続き進めていく。特に、平成27年度に開発したアルゴリズムについて、光伝搬シミュレーションでの有効性が確認できなかった点を解決し、新たな多体型マルコフ連鎖アルゴリズムの完成を目指す。 また、密度推定法とマルコフ連鎖モンテカルロ法の組み合わせについても多くの知見が得られたため、多体型に限らず引き続き研究を発展させて有効な計算モデルの確立を目指す。勾配空間でのシミュレーションについても、多体型モンテカルロ法とのより強い理論的連結を目指し、関連手法の研究を推進する。 これらのアルゴリズムについて、光伝搬シミュレーション以外への応用も視野に入れた研究へのステップとして、コンピュータグラフィックスの分野外での学術発表を行ないたい。
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Research Products
(9 results)