2017 Fiscal Year Annual Research Report
多体型マルコフ連鎖による超並列光伝搬シミュレーション
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15H05308
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
蜂須賀 恵也 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 講師 (00748650)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | レンダリング |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、勾配空間における計算と多体型マルコフ連鎖モンテカルロ法の関係についての知見を深めるため、前年度での勾配空間におけるシミュレーション手法の研究を発展させ、煙や雲など光の散乱引き起こす物体(関与媒質と呼ばれる)を勾配空間のシミュレーションで扱う初の枠組みについて研究をおこなった。
関与媒質内での光伝搬シミュレーションでは、面だけを扱うシミュレーションに比べて問題の次元が上がり、密度推定法を含め、さまざまな計算手法が可能なことが知られている。本研究の成果では、現状で存在するさまざまな計算手法を全て勾配空間に拡張し、関与媒質においては必ずしも全ての手法で勾配空間によるシミュレーションが有効でない事を示した。この成果はACM SIGGRAPH 2018に投稿し、Technical Papersプログラムに条件付採録された。この知見を元に、勾配空間におけるシミュレーションと多体型マルコフ連鎖モンテカルロ法の関係について数学的な定式化に大きな進捗があった。この定式化を用いて、有効な数値計算手法を構築するため、数値実験を継続して行なっている。
年度の後半には、多体型マルコフ連鎖モンテカルロ法の知見を生かして、多体型の(マルコフ連鎖でない)モンテカルロ法を用いた、many-light renderingという光伝搬シミュレーション手法について研究を行なった。この手法は扱える反射特性が限られるものの、非常に高速に実行できる事が知られている。しかしながら、とある近似を導入しないければ、計算の収束が非常に遅くなり、近似を導入すれば、光のエネルギーが低く見積もられるというジレンマがあった。本研究では、このジレンマを解決するために多体型モンテカルロ法と密度推定法を組み合わる手法を提案した。成果はリアルタイムレンダリングに関する研究が多く出版される、ACM SIGGRAPH Symposium on Interactive 3D Graphics and Games 2018に採択された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度は、それまでの知見を元にして、多体型マルコフ連鎖モンテカルロ法を用いた光伝搬シミュレーション手法の完成を目指す予定であった。しかしながら、数値実験による結果を元に、再度定式化を見直すことを決めたため、具体的な数値計算手法を適用するところまでは研究が進まなかった。
密度推定との組み合わせについては、多体型のマルコフ連鎖でないモンテカルロ法について、新たな知見を得ることが出来た。ただ、この成果についてはマルコフ連鎖モンテカルロ法に直接適用できるものではないと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初は派生的な成果であった、勾配空間における光伝搬シミュレーションについて、多体型マルコフ連鎖モンテカルロ法への論理的な繋がりを見出すことができたため、次年度には目標とする多体型マルコフ連鎖モンテカルロ法の手法が確立できると考えている。現在のところ、定式化は一般に適用可能なものにはなっていないため、その一般化についても検討する予定である。
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Research Products
(6 results)