2017 Fiscal Year Annual Research Report
Investigation of socio-ecological factors on the evolution of cooperation and norm: comparative cognitive studies of bonobos, chimpanzees, and humans
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15H05309
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山本 真也 京都大学, 高等研究院, 准教授 (40585767)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 協力行動 / 進化 / 類人猿 / 伴侶動物 / 比較認知科学 / 規範 |
Outline of Annual Research Achievements |
飼育ボノボ・チンパンジーでの観察・実験研究、および野生ボノボを対象とした観察研究をおこなった。協力行動として、食物分配協力および危険状況下での集団協力に注目してデータ収集・分析をおこなった。また、協力行動を考える上で重要な要素である共感および他者との行動同調について、観察および実験のセットアップをおこなった。 食物分配にかんしては、これまでの野生下での観察から、ボノボの果実分配はチンパンジーでみられる肉分配と様相が違うことを明らかにしてきた。ボノボの食物分配は、栄養面の獲得というよりも、他者と社会的な絆を形成するための分配・要求といった社会的側面が強く、「儀礼的食物分配」と名付けた。2017年度は、これをより統制のとれた環境下で検証すべく、京都大学熊本サンクチュアリの飼育ボノボを対象に、集団構成や食物の質・量を人為的にコントロールした実験を継続した。「儀礼的食物分配」仮説から導かれる予測通り、社会関係を再構築する必要がある状況下で分配が増加するというデータが得られている。協力行動が進化した社会的および環境要因の解明につながると期待できる。 危険な状況下での集団協力にかんしても、引き続き野生チンパンジーと野生ボノボの道渡りパターンの比較分析を進めた。ボノボよりもチンパンジーにおいて、洗練された集団協力行動がみられている。また、初期人類の足跡化石から示唆されているDirect Register(前を行く個体の足跡を踏む歩き方)がチンパンジーでみられるのかどうかについて、分析を進め、論文執筆の準備をおこなっている。 これらの成果を、査読付き英文学術雑誌に2編、和文学術雑誌に1編、にまとめて発表した。また、英文学術本を編集しOxford University Press より出版した。章の分担執筆としても2編執筆し貢献した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ボノボの研究にかんしては、当初の計画以上に進展していると言える。Oxford University Pressから英文学術書を出版することができた(米国Duke大学のBrian Hare博士との共同編集)。ボノボの認知に関する世界でも最初の学術書である。野外研究と実験研究の両方を盛り込んでいるという点でも、きわめてユニークな学術書になっていると自負している。 また、ボノボの新しい調査地の開拓も順調に進んでいる。この調査地での研究が進めば、協力と規範の進化について、種間比較だけでなく、種内の生息域比較からの考察もできる。環境要因の解明に大きく寄与すると考えられる。また、伴侶動物での比較認知研究も軌道に乗せることができた。すでに国際学術誌に査読付き論文を掲載し、国内外のメディアに大きく取り上げられるまでになった。現在も複数のプロジェクトを走らせており、今後も順調に成果をあげられる見込みがたっている。 2016年度同様、唯一遅れがあるとすると、野生チンパンジーの研究だが、これまでに収集したデータの分析が順調に進んでいる。 上記学術本の出版のほか、学術論文にかんしては、学術本分担執筆も含めて2017年度に英文学術論文を4本、和文学術論文を1本公表することができた。現在も3本の論文を執筆中である。全体として、研究計画通り順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画を変更しなければならないような問題点はとくになく、これまでの研究方針を継続させる。新しい野生ボノボの調査地での研究を継続させる。野生ボノボの行動研究が精力的におこなわれている調査地は全世界で現状2つしかなく、調査地・環境での比較がほとんどおこなわれてこなかった。しかもこの2つともが熱帯雨林の奥深くに位置している。2015年度から新たな研究拠点を開拓すべくサバンナ混交林に住むボノボの調査をおこなっており、今後の本格調査に向けた基盤を整えた。世界で初めてのボノボ集団間比較をおこなうべく、今後もデータ収集を継続する。 2017年度は野外観察に比較的重点を置いたが、2018年度は飼育下での実験研究にも注力したい。協力行動を考える上で重要な要素である共感および他者との行動同調について、観察および実験の準備をおこなってきた。2018年度にはデータ収集がおこなえる見込みである。 イヌとウマでの研究も継続して進展させる。それぞれ自然条件化と飼育下での研究環境を整えることができた。今年度は大学院生3名の参画もあり、本格的なデータ収集がおこなえる見込みである。社会的関係の密な伴侶動物と進化の隣人、それぞれ2種ずつを比較するという世界でも唯一といえる研究を推進する。 2018年度は、本研究課題の最終年度として、論文執筆にこれまで以上に注力する。現在執筆中の3本の論文の公表を早期に目指すとともに、本プロジェクトの成果をまとめた総説論文も含め、新たな論文執筆にもとりかかりたい。
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Research Products
(17 results)