2017 Fiscal Year Annual Research Report
高精細音響システムのための超解像型音場収音・再現の研究
Project/Area Number |
15H05312
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小山 翔一 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 講師 (80734459)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 音響情報処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、高精細音響収録・再生システムを実現するため、超解像型音場収音・再現技術を確立することを目的とする。音場収音・再現技術とは、音空間を物理的に忠実に再構成するための技術であるが、既存の技術では、マイクロフォン・スピーカ素子の数や配置間隔によって、再現可能な周波数や空間解像度が制限されていた。そこで本研究では、収音場や再現音場の性質を陽に取り入れた信号モデルと、機械学習理論による最適化に基づく新たな信号処理のアプローチにより、聴感上の品質を保つために必要なアレイ素子数がより少ない高精細音響収録・再生システムの実現を目指す。 本年度は以下の3項目について研究を遂行した。(1)残響環境下でのスパース音場分解について、低ランク信号と平面波領域スパース信号の和による新たなモデル化について検討し、従来法を上回る性能が達成可能であることを実験的に示した。凸最適化問題として定式化し、交互方向乗数法に基づくアルゴリズムを定式化した。(2)従来のモノポール辞書に加えて、多重極子の辞書を用い、グループスパース性を利用した信号分解を行うことで、音源が格子点上に存在しない場合に分解精度が低下するオフグリッド問題を回避可能であることを示した。(3)スピーカ・マイクロフォン配置の最適化手法に関する検討を行った。これまでは解析の利便性から等間隔配置を用いることが多かったが、音響数値シミュレーション等で事前に予測したスピーカの伝達関数に基づき、再現精度と逆フィルタの安定性の意味で最適となるような配置を得る手法を考案し、シミュレーションによる実験的な検証を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
スパース音場分解における分解精度は、再現性能に直接影響を与える。残響環境下における性能劣化は特に大きな問題であったが、(1)の低ランク信号と平面波領域スパース信号の和によるモデル化が効果的であることを発見したことは、大きな進展であった。凸最適化の形で最適化問題が定式化可能であり、交互方向乗数法を適用可能であることも、実用上の利点として大きい。また、(2)のオフグリッド問題は、近距離場を離散的に表現することに基づくスパース音場分解の手法において特に顕著であったため、多重極辞書を用いることが効果的であることを実証し、また、それによって必要な辞書のサイズを削減できることを示したことは、学術的・実用的に重要な成果であったと言える。(3)のスピーカ・マイクロフォン配置の最適化については、申請時計画にはない内容であったが、empirical interpolation methodと呼ばれる手法に基づく最適化が非常に有効であることを示した。
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Strategy for Future Research Activity |
残響環境下でのスパース音場分解に関して、その他のモデル化との比較をより詳細に行うとともに、実環境データを用いた実験に着手する。また、多重極辞書を用いたオフグリッド問題の回避を含め、これまで検討してきたスパース音場分解法の拡張手法を総合的に評価したい。また、スピーカ・マイクロフォン配置手法については簡単な実験での比較に止まっているため、一般的なセンサ配置法を含む従来手法との比較など、より詳細な解析を行っていく予定である。音場収音・再現だけでなく、広く音場制御のためのスピーカ・マイクロフォン(制御点)配置法として、有効性を実証することを考えている。
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Research Products
(11 results)