2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15H05316
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長谷川 圭介 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特任助教 (20733108)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ヒューマンインタフェース / バーチャルリアリティ / 嗅覚 / 非線形音響 / フェーズドアレー |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度の主要な成果は主として以下の二つに大別される。第一は、音響ベッセルビームを超音波フェーズドアレーにより実際に生成し、その伝播に伴って実際に音響流が発生し、その内部の煙をトラップしたまま輸送することを実験的に確認したことにある。発生した音響流の直径はたかだか20mm程度であり、超音波の波長と同程度の径を持つ狭い断面積の流れに煙を一定距離閉じ込めることが可能であることが確認された。これにより、研究の大前提としての「音響流で匂いを輸送する」という原理の実現性について物理的な妥当性が示された。 第二は、音響駆動力のシミュレーションについての順問題的な検討である。自由空間においてフェーズドアレーを用いてビームを形成し、その結果として生じる空気中の音響流を数値的にシミュレートする手法の確立は研究上重要な要素である。これについて、1)まず線形の音響シミュレーションによって音圧および粒子速度の空間分布を求め、2)これらの量から非線形音響現象としての音響流を生じさせる音響駆動力を先行研究に従って求め、3)これに基づいて流体の非線形方程式を数値的に解く、という三段階の計算を行うことで最終的な音響流を求める方略を提案し、この実現を目指して実装を進めている。現状においては、音響駆動力の空間分布をシミュレーションソフトを用いて求める段階までの実装が一通り終わっており、これに基づいて最終的な音響流の分布を求めることは来年度における課題とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
提案する原理に基づく遠隔匂い提示について、一定の実現可能性が実験的に示されたため。また、研究遂行上不可欠なシミュレーション手法の確立において、一定の進展が見られ、当初の予定通りの進捗であると判断されるため。
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Strategy for Future Research Activity |
音響流の分布を求めるシミュレーションを完成させることが第一の研究課題である。手法の妥当性は、実際に生成した流れを風速計を用いて計測し、シミュレーションとの整合性を評価することで議論する。 つぎに、拡散の効果を発生した流れに加味した移流拡散方程式を用いて最終的な匂い物質の濃度分布のシミュレーション法の開発に取り組む。 ここまでが、いわゆる「順問題的な」すなわち音源が与えられた場合の匂い物質の分布を求めるシミュレーションであるが、つぎの段階としては、所望の匂い物質の分布を実現する音源の駆動法はどのように決定すればよいかという「逆問題的な」課題について、最適化を主とした数理的な手法を用いて確立し、その妥当性を検討することを今後目指す。 これに加え、匂いの分布から最終的にヒトが知覚する匂い刺激の強度を予測するモデルの構築を並行して進める予定である。
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Research Products
(1 results)