2016 Fiscal Year Annual Research Report
海底開発による環境影響評価に向けたラマンライダーによる海中モニタリング技術の開発
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15H05336
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Research Institution | Institute for Laser Technology |
Principal Investigator |
染川 智弘 公益財団法人レーザー技術総合研究所, レーザープロセス研究チーム, 副主任研究員 (00508442)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 応用光学・量子光科学 / 環境分析 / リモートセンシング |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の領海・排他的経済水域は国土面積に比べて12倍程度と広く、海底鉱物資源・メタンハイドレート掘削、CO2を海底地層に圧入して大規模削減を目指すCCS等の有効な海底利用が計画されている。海底開発では資源探査手法だけでなく海洋生態系・環境への影響評価が必要とされているが、現状の採取・採水測定では頻度とエリアに限度があり、海中での効率的なモニタリング手法の開発が必要である。そこで、海底を効率よくモニタリングするために、レーザーを用いたリモートセンシング技術であるライダーを利用した海中モニタリング技術を開発する。水中ガスのラマン信号から3次元マッピング観測を行い、効率的な海中モニタリングが可能にある。現有の技術シーズである水中ガスラマンライダーの海中での適用可能性を検討するために、水深が20mと浅い箇所からメタンガスを主成分とする火山性ガスが湧出する竹富島海底温泉での海中モニタリング観測に向けた研究を実施している。 H27年度では波長355 nmのナノ秒パルスレーザーを用いて、水溶存メタンガス、メタンガスのラマン分光測定を行い、海上ラマンライダーの仕様を決定した。H28年度は竹富島海底温泉の海面海水を採取し、波長355 nmのレーザー照射によってラマン散乱を阻害する蛍光等が生じないことを確認した。また、現地でレンタルできる傭船に設置可能な海上ラマンライダー装置を作成した。波長355 nmのレーザーを海中に照射し、海中からのラマン散乱光は直径20 cmの望遠鏡で取得する。散乱光は光ファイバーで検出器に導かれ、ラマンスペクトルと特定の波長でのライダー信号の取得が可能である。開発したシステムは、可搬型のインバータ発電機で動作が可能であり、18 m離れた位置に設置した水のラマンスペクトル、ライダー測定に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H28 年度の5月に竹富島を訪問し、観測に向けた調査と打合せを実施した。海上観測に使用する傭船を確認し、海上ラマンライダー装置の概観、設置場所、固定手法を検討した。後日、竹富島海底温泉の海面の海水を送付してもらい、波長355 nmのレーザー照射によって、ラマン散乱を阻害する蛍光等が生じないことを確認した。 海上ラマンライダーは、傭船の通路に設置するシステムとした。レーザーは繰り返し20 Hz、パルスエネルギー120 mJの低消費電力なナノ秒パルスレーザーとし、直径20 cmの望遠鏡で海からのラマン散乱光を取得する。散乱光は光ファイバーで1800本/mmの回折格子を搭載した焦点距離30cmの分光器に導かれる。分光器の検出ポートにはCCDとPMTが取り付けられており、光路上のミラーを出し入れすることによって検出器を切り替えることが可能である。CCDを用いると短時間で1200~3800 cm-1のラマンスペクトルの測定が可能であり、PMTでは特定の波長でのライダー信号の取得が可能である。 海上では塩害による電子回路のトラブルが想定されたため、システムは密閉しているが、レーザー電源等の排熱によって、システム内の温度が上昇する。そのため、除塩フィルターを取り付けたファンでシステムの排熱を行っている。システムを密閉した状態で、レーザーと計測システムを全て起動させると、室温の21℃から2時間程度で5℃程度上昇し安定する。そのため、レーザーの波長変換結晶の温度最適化はシステム内の温度が安定してから再度必要となるが、その後は1時間以上、レーザー出力は安定した。また、CCDカメラは5℃の温度上昇でも、電子冷却機構に不具合は生じなかった。システムの動作確認は、レーザーを水平に照射し、18 m離れた位置に設置した水のラマンスペクトル・ライダー測定によって評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、現有の技術シーズである水中ガスラマンライダーの海中での適用可能性を検討するために、水深が20mと浅い箇所からメタンガスを主成分とする火山性ガスが湧出する竹富島海底温泉での海中モニタリングに向けた研究を実施している。H27年度では水溶存メタンガスのラマン分光測定を行い、使用するレーザー波長、海中モニタリングに最適なメタンのラマン波長を決定した。H28年度では、得られた結果を基にして、海上観測に向けた水中ガスラマンライダーシステムを開発した。H29年度では開発した海上ライダーシステムを用いて、竹富島海底温泉にて海中のメタンガスの分布測定を実施する。 竹富島海底温泉での観測実績のある現地の実験コーディネーターと打合せを行い、観測日程を決定する。観測予定日までは実施予定月の竹富島の平均気温と同程度の外気温で、システムの動作試験を実施し、温度変化によるシステムの動作を確認する予定である。海上ライダー観測は1週間程度で計画しており、初日に移動、荷物の受け取り、システムの動作確認、2日目は傭船へのシステムの取り付け、動作確認、3日目から海上観測をスタートする予定である。海上からレーザーを照射し、メタン気泡からのラマンスペクトル、ラマンライダーデータを取得する。得られたデータを評価するとともに、海上観測における問題点を抽出し、2回目の観測に向けてシステムの改良を行う。2度の海上観測から本手法の実現可能性を検討する。
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Research Products
(6 results)