2016 Fiscal Year Annual Research Report
鉛の土壌中金属酸化物への選択的濃縮現象:メカニズムの解明と先駆的浄化技術への活用
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15H05337
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
鈴木 祐麻 山口大学, 創成科学研究科, 准教授 (00577489)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 土壌汚染 / 重金属類 |
Outline of Annual Research Achievements |
【検討項目1】デキシークレーを用いて作製した人工汚染土壌において、鉛が二酸化チタンに析出している割合の明確化を行った。具体的には、鉛が二酸化チタンに析出している割合を明らかにすることで、磁力選別で得られる最大の除去率を把握した。 【検討項目2】デキシークレーを用いて作製した人工汚染土壌に対して、有機物質の含有量が鉛・砒素の除去率に与える影響を評価した。 【検討項目1に対する実験結果】 デキシークレーには、鉛(II)イオンと高い親和性を示すことが知られている酸化鉄が1.7wt.%含まれている。このことを踏まえ、本研究では5ステップで鉛の分画を行った。その結果、本研究で検討した人工汚染土壌の場合、アナターゼに収着している鉛が全体の32%以上を占めており、酸化鉄に吸着している鉛と合計すると50%以上の鉛が金属酸化物に収着していることが分かった。この結果は、磁力選別により酸化鉄およびアナターゼを除去できれば、50%以上の鉛を除去できる可能性を示している。 【検討項目2に対する実験結果】 日本エリーズマグネチックス株式会社のフェラストラップ(表面磁力1.5T)を用いて、固液比1:20 (100 g : 20L )の一定条件下で反応時間が重金属の除去率に及ぼす影響を検討した。なお、土壌の汚染濃度は736mg-Pb/kg-soilおよび490mg-As/kg-soilである。その結果、重金属の除去率は時間と共に増加するが、24時間以降の更なる除去は得られず、最大27%(鉛)および42%(ヒ素(V))の除去率にとどまった。また、有機物含有汚染土壌では20%以下の低い低下率であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、鉛がデキシークレー中の二酸化チタンに選択的に収着している割合を実験的に(定量的に)求める手法の開発など、有意義な結果が得られた。しかしその一方で、フェラストラップによる重金属の除去率は特に有機物含有土壌では低かったため、来年度に更なる改善が必要であることも分かった。 これらのことを踏まえると、これまでは研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度で得た研究結果から、磁力選別により酸化鉄およびアナターゼを除去できれば、50%以上の鉛を除去できる可能性が示された。しかし、磁力選別実験によって得られた除去率は最大27%(鉛)および42%(ヒ素(V))であり、さらに有機物の存在により磁力選別の効果は大きく低下した。これらの研究結果を踏まえ、2017年度は、鉛がアナターゼに選択的に収着する現象をさらに追求すると同時に、2016年度に用いたデキシークレー以外の土壌(ジョージアカオリナイトを予定)を用いた実験を行う。さらに、通常の土壌に含まれる金属酸化物の大きさを考慮した上で、2016年度に行った磁力選別と同様の実験を継続して行っていく予定である。繰り返しになるが、我が国の汚染土壌は環境基準を大幅に超過する場合は少ない。そのため、50%の除去率が得られれば十分実用化の見通しがあると考えられる。
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