2015 Fiscal Year Annual Research Report
パラメトリック・スピーカーを動的に用いた新たなデジタルサイネージの研究開発
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15H05343
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Research Institution | Tohoku University of Art and Design |
Principal Investigator |
酒井 聡 東北芸術工科大学, デザイン工学部, 講師 (90515157)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 情報デザイン / 工業デザイン / 空間・音響モデリング / ヒューマンインタフェース / 感性インタフェース / 感性デザイン |
Outline of Annual Research Achievements |
デジタルサイネージ分野の技術革新は文字通り日進月歩であり、これまで以上の関心が寄せられている。しかし、それらの多くは視覚に頼ったものがほとんどで映像と音響などをマルチモーダルに用いた事例は少ない。本研究では、パラメトリック・スピーカーを動的に用いて音響を主体としたデジタルサイネージとして扱う方法を研究開発する。 平成27年度では、研究実施計画「1. 音響を聴者に「直接的に」与える方法の検証」「2. 音響を聴者に「間接的に」与える方法の検証」を行った。先ず、聴者に対して「直接的に」音響を与える方法として対象者にBluetooth・Wi-Fi・GPSなどの通信機器を装着してもらい位置情報を取得した。しかし、この方法ではそれぞれの通信モジュールの特性により必要な位置情報を得ることができなかった。次に研究者が有する画像センシング技術と映像信号処理を用いて聴者の位置情報を取得した。こちらは正確な位置情報が得られた。ただし、位置情報は検知できたが対象者に出力された音響は多少のずれが生じた。 以上の実験から、本研究では対象者の位置情報を検知する方法を画像センシング技術と映像信号処理を用いることとした。これまでの研究実績で作成した実験用デモ機にカメラを追加し、画像解析機能を付加し本研究用実験機として最適化を図った。その精度については次年度以降にも実験機の改良を加えることで対処したいと考えている。 次に聴者に対して「間接的に」音響を与えるために平滑な壁面を格子状にゾーニングし反射音から音の出力位置を擬似的に感じられるか検証するための準備を行った。研究実施計画では平成27年度において検証まで終了する予定であったが、研究機関内において被験者に対する研究倫理審査を準備する必要があり準備までに留まってしまった。 加えて、デジタルサイネージとして想定される用途、利用分野、市場を検証する視察を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要にも記載した被験者に対する研究倫理審査を研究期間内で調整する必要があったため、被験者を用いた実験に取り掛かることができなかったためやや遅れているとしている。ただし、この遅れは今後解消可能な遅れである。 その他の研究達成度としては、「対象者の位置情報を検知する方法を画像センシング技術と映像信号処理を用いること」を早期に判断ができたため、実験機の最適化を追加して行えた。具体的には、赤外LEDなどの光をカメラで認識その位置に対して音響の出力方向を自動で制御できるように実験機を最適化したため、さまざまな物体に対して音響の出力位置を指示することができ、また出力位置を追従することも可能となったため音響の擬似効果を用意に実現できるようになった。そのため、「2. 音響を聴者に「間接的に」与える方法の検証」において想定していた建築物や製品などの形状が固定で変形しない物体、 自家用車やバス、鉄道車両などの移動する物体、研究担当者が研究開発した動的に変化する投影面を持つデジタルサイネージに音響出力し効果を検証した。結果として、音響を出力する対象物よりも音響の内容によって位置情報の認識に大きな違いが起こることが確認されたので、次年度では音響コンテンツの最適化も図る必用がある。 以上のことから、平成27年度研究実施計画にあった「1. 音響を聴者に「直接的に」与える方法の検証」については予定通り完了し、「2. 音響を聴者に「間接的に」与える方法の検証」については実験の遅れが生じているが実験機の最適化が良好であるため次年度以降で挽回可能な状況であると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度までに得られた結果を基にして、以下の内容について採択2期目である平成28年度の研究開発を実施する。 1.音響を聴者に与える方法の追検証と確率:対象者の位置情報などを判別する方法は概ね確立されたので、その精度向上を図りパラメトリック・スピーカーの出力角をより小さくできないかを検証する。また、音響のコンテンツによって位置情報の認識に大きな違いが生じていたため、最適なコンテンツについて検証を重ねたい。 2.想定される用途、利用分野、市場の検証のための作品制作と公開発表:平成27年度の研究成果を活かし、次の用途、利用分野、市場における応用領域の検証を行う。A) 公共のデジタルサイネージなどとの併用を行い各種情報提示・広告としての応用展開、B) 視覚障害を持つ人々のための新たな情報提供機器としての応用展開、C) メディアアートやコンサートなどの芸術分野の新表現の開拓といった3つの応用領域の可能性を模索したい。どの応用領域についても可能性は高いと考えているが、それらを機能や性能だけに留まらず人の感性にどのような訴求力があるのか、感動や満足度などを生み出せるのかといったユーザー・エクスペリエンスの視点を重要視しデザイン分野からこういった研究開発を行う意義を示したいと考えている。そのためには、研究者単体で研究をすすめるのではなく認知心理学や音響の専門家などの助言を得ながら応用領域の拡充を図り、研究を推進することが重要である。
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