2016 Fiscal Year Annual Research Report
パラメトリック・スピーカーを動的に用いた新たなデジタルサイネージの研究開発
Project/Area Number |
15H05343
|
Research Institution | Tohoku University of Art and Design |
Principal Investigator |
酒井 聡 東北芸術工科大学, デザイン工学部, 准教授 (90515157)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 情報デザイン / 工業デザイン / 空間・音響モデリング / ヒューマンインタフェース / 感性インタフェース / 感性デザイン |
Outline of Annual Research Achievements |
デジタルサイネージ分野の技術革新は文字通り日進月歩であり、これまで以上の関心が寄せられている。しかし、それらの多くは視覚に頼ったものがほとんどで映像と音響などをマルチモーダルに用いた事例は少ない。本研究では、パラメトリック・スピーカーを動的に用いて音響を主体としたデジタルサイネージとして扱う方法を研究開発する。 平成28年度では、平成27年度の研究内容を踏まえ、対象者の位置情報を検知する方法を画像センシング技術と映像信号処理を用いることとし、実験用試作機の改良を行った。本研究者がこれまで研究開発を行ってきた同様の技術を用いた映像投影システムに、本研究システムを組み込みを試みた。具体的には、85mm ×135mmのカード状のアクリル板に作成したマーカーを貼り付け、位置情報と角度情報などを取得した。このカードに対し映像投影を行うとともに音響も出力をし、反射を用いることであたかもカードから音が出力されているようなシステムとした。このシステムを用いることで、研究の目的でもある映像と音響を合わせマルチモーダル性を実証できた。特に2017年11月3日 ~ 6日の期間、日本科学未来館にて行われた「サイエンスアゴラ2016」に試作機を展示したことで、一般来場者だけでなく多くの有識者の意見を収集するに至った。加えて、同11月25日・26日に京都市立芸術大学にて開催された芸術工学会秋期大会にて、研究内容と先述の展示内容について口頭発表を行った。その際に、特許の調査、取得などの助言を得たため、次年度では実験と併せて出願に向けた活動も行うこととした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記載した通り、研究者がこれまで開発を行った映像投影システムと統合することができたため、研究成果の公開を予定を早めて行うことができた。これは昨年度の研究成果から「対象者の位置情報を検知する方法を画像センシング技術と映像信号処理を用いること」を早期に判断ができ、実験機の最適化を完了したためである。特にサイエンスアゴラ2016の展示では多くの有識者からの意見を収集するに至り、異なるアプローチで同様な研究を行っている研究者と出会うことができ情報共有が行え、それぞれの研究方法の得手不得手が明らかになり今後の進行について具体化が進んだ。また、学会においても口頭発表の機会を得ることができ、研究内容の実用化について検討する術を得た。加えて、特許の取得についても助言を得ることができた。 しかしながら、上記の通り研究成果展示はできたが、平成27年度研究実施計画の「2. 音響を聴者に「間接的に」与える方法の検証」については不充分であるように感じている。それは展示では多くの来場者に研究内容の体験は可能だが、リファレンスを取るには会場が大きいこと、時間的な制約があることなどから計測ができなかったため、次年度において追加検証が必要であると判斷する。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度までに得られた結果を元にして、以下の内容について採択最終年度の研究開発を実施する。 1. 実用化に向けた特許の取得:平成28年度の研究活動内で学会における口頭発表を行い、特許取得の可能性の高さを助言いただいた。しかしながら、同時に類似した成果をあげる他の手法についての情報も得たため、今後は研究者自身のみではなく専門家による特許の調査を行い、より正確に研究内容の独自性を確立したい。 2. 想定される用途、利用分野、市場の検証のための作品制作と公開発表:平成28年度の研究成果を活かし、昨年度同様に次の用途、利用分野、市場における応用領域の検証を行う。A) 公共のデジタルサイネージなどとの併用を行い各種情報提示・広告としての応用展開、B) 視覚障害を持つ人々のための新たな情報提供機器としての応用展開、C) メディアアートやコンサートなどの芸術分野の新表現の開拓といった3つの応用領域の可能性を模索したい。どの応用領域についても可能性は高いと考えているが、それらを機能や性能だけに留まらず人の感性にどのような訴求力があるのか、感動や満足度などを生み出せるのかといったユーザー・エクスペリエンスの視点を重要視しデザイン分野からこういった研究開発を行う意義を示したいと考えている。そのためには、研究者単体で研究をすすめるのではなく認知心理学や音響の専門家などの助言を得ながら応用領域の拡充を図り、研究を推進することが重要である。 以上の内容について、WEBや印刷物などのメディアを用いて情報の集約と公開を併せて行い、今後の実用化へ向けた展開へと繋げたい。
|
Research Products
(1 results)