2016 Fiscal Year Annual Research Report
新規データに基づく東アジアにおける家畜化および家畜利用に関する総合的研究
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15H05348
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
覚張 隆史 金沢大学, 国際文化資源学研究センター, 特任助教 (70749530)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 動物考古 / 家畜化 / 動物利用 / 同位体 / 食性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本列島及び東アジアの遺跡出土動物骨を用いて、家畜化及び家畜利用の興味深い地域の検出を目指すものである。その検出指標として、摂取する餌情報を間接的に示す同位体情報と家畜の生理的な差異を示すDNA情報に分けて、比較検討を進める。特に、東アジアにおいて特徴的な家畜化及び家畜利用の検出が期待されるイヌ・ブタ・ウマの3プロジェクトに区分して計画を進めている。 本年度はプロジェクトA(イヌ)・プロジェクトB(ブタ)・プロジェクトC(ウマ)でそれぞれ分析を進めており、既にサンプリング済みの資料の分析および情報の集約を行った。 日本国内の資料において、プロジェクトAは15遺跡、プロジェクトBは10遺跡、プロジェクトCは16遺跡のデータが得られたため、これらのデータをGISプログラムを用いて可視化した。4年間で目標の47遺跡までは、まだ3/4の達成率であるがサンプリング状況としては順調に推移している。 本年度の新規サンプリングでは、北海道2遺跡、青森県2遺跡、岩手県2遺跡、山梨県5遺跡、千葉県2遺跡、神奈川県1遺跡、東京都2遺跡、富山県1遺跡、石川県2遺跡、福井県1遺跡、大阪府2遺跡、和歌山県1遺跡、奈良県2遺跡、兵庫県4遺跡、岡山県1遺跡、沖縄県3遺跡、また海外比較試料として中国遺跡3遺跡を試料採取及び分析を実施した。昨年に引き続き、一部の遺跡では分析報告書を作成したため、GISデータベースに追加していく。 また、昨年度に公表した山梨県の遺跡出土馬について、中世以降に雑穀利用率が上昇していることが検出されたため、山梨県についてはより遺跡地点を増やして分析を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は昨年までのサンプリング状況を考慮して、分析試料の採取に重きを置いて研究を進めた。昨年度はプロジェクトA及びCにおいてサンプリング達成状況が1/4であったが、本年度で3/4までの達成度に至った。本年度採取した試料は同位体分析を進めており、来年度上半期には完了する予定である。最終年度前には試料採取及び分析結果がおおよそ出揃うため、昨年の進行状況の遅れは解消したと考える。よって、おおむね順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は、まだ試料採取数が少ない地域(九州、四国、東北)に焦点を絞ってサンプリング及びデータアウトプットを進めることである。また、分析方法が確立されてきたDNA分析については、日本国内の遺跡出土骨DNAの保存状況が想定よりも悪く、分析数を増やすよりも、良好な試料を探索して結果を出すことの方が重要であると判断し、昨年度からこれらの試料の探索を進めていた。探索の結果、中国西周時代の試料や、日本の古墳馬、古代馬、中世馬で、良好なDNAの保存が確認された側頭骨を得ることができた。今後、これらのDNA分析を中心にデータをアウトプットしていく。また、同位体分析においては、現在使用している分析機器の測定速度がやや遅いことから、より測定速度が速い機種に変更することにした。本年度上半期中頃まではセッティングに時間を要するが、その後、今まで以上に測定点数が稼げるようになると期待される。よって、本年度で採取予定の試料についても、その多くが本年度中にデータをアウトプットできると考えられる。また、今まで出てきたデータに基づいて、同位体景観学的な内容で学術誌に論文を投稿する予定である。
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Research Products
(3 results)