2015 Fiscal Year Annual Research Report
医療サービス提供のためのシミュレーションシステムの構築
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15H05349
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Research Institution | National Institute of Public Health |
Principal Investigator |
市川 学 国立保健医療科学院, その他部局等, 主任研究官 (60553873)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 医療サービス / シミュレーション / エージェントベース / 疫学 / AED / クリニカルパス |
Outline of Annual Research Achievements |
救急搬送モデルについては、特定の医療圏の中における患者発生から医療機関への搬送・診療までの一連のプロセスをシミュレーションできるモデルを拡張し、現行制度である病院群輪番制の導入ケースと導入しないケースで、救急患者の搬送時間と医療機関へ搬送患者数にどのような影響が及ぼされるかを、シナリオ分析を通じて比較することを可能にした。さらに複数の医療圏においてシミュレーションができるよう対応を行い、モデルの利用可能性について評価を行った。 日中の医療機関受診モデルについては、医療連携体制における患者の行動および医療機関の負担を観測、分析、 評価できるシステムの構築のため、厚生労働省が発表する患者調査を分析することにより、日本全国において1日あたりどのような疾患を患った患者が発生し、どの診療科の需要が生じるかを明らかにした。さらに、地域特性に応じた分析が行えるよう既存研究のモデルを改良し、日本全国の医療圏を対象とした地域での患者の受療行動シミュレーション分析を可能にした。地域毎の統計的数値を用いる機能を追加することで、より精密な地域特性をモデル上で再現することが可能になった。 なお、医療サービスの分野において、これまでに明らかにされたAEDの使用状況の分析結果を活用して、住民として表現されたエージェントにAEDを使用するに至る経緯を確率的イベントとして適用することで、現実世界におけるAEDの利用状況を再現するシミュレーションモデルの構築を開始した。心原性心停止の発生から目撃、AEDおよび心肺蘇生を含む処置、搬送、病院収容、診療終了までの一連の転帰に関連するプロセスを構築することによって、AEDの最適な配置について提案することを目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
救急搬送モデルについては、夜間救急の制度導入を、シナリオ分析という形で評価できるようシミュレーションモデルの改良を行ったことで、救急患者の搬送時間と医療機関へ搬送患者数にどのような影響を全国の医療圏を対象としてシミュレーションできる環境を整えた。概ね、救急搬送モデルについては目的を達成したと考える。 医療機関受診モデルについては、モデルの利用可能性を示唆することができるだけのシミュレーション結果を得ることができるようにモデルの改良を行うことを優先事項とし、救急搬送モデルと同様に日本全国に存在する全ての医療圏に対応できるモデルへと拡張することを目指したが、シミュレーションの結果の妥当性評価を行うまでには至らなかった。これは、厚生労働省が発表する患者調査の分析に予想以上に時間がかかったことに起因している。しかし、地域特性をモデル上で再現することまでは可能になったため、当初からの進捗については、多少の遅れが生じている程度と考えている。 なお、新たにAEDに関する研究を始めたことにより、別のシミュレーションモデル構築への影響が出ているが、医療領域における需要も日々変化することを踏まえると、人の命に直結するAEDの配置問題に意識を持ち、研究を開始し始めた点については、進展したとみなせると考える。 全体としては、当初予定よりモデルを構築する対象領域が1つ増えたことを考慮しても(日中の医療受診モデルが多少遅れたが、AEDに関する研究を始めることができたため)、全体的には順調に研究計画が進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度より新たに取り組み始めたAEDに関する研究については、AEDおよび心肺蘇生を含む処置、搬送、病院収容、診療終了までの一連の転帰に関連するプロセスの見直しを行い、エージェントベースのアプローチを採用したシミュレーションモデルの構築を行う。このモデルでは、エージェントとなる住民が、日常生活を行っている中で、確率的に心肺停止事例を発生し、AEDの使用・病院搬送を表現することで、すでに設置されているAEDの使用頻度や配置に関する問題提言を行うことを目指す。 日中の医療機関受診モデルについては、地域特性に応じた分析が行えるよう改良されたモデルを活用して、日本全国の医療圏を対象とした地域での患者の受療行動シミュレーションの結果の妥当性評価を行う。必要に応じて、医療従事者の協力を得て、モデルの修正を行い、現実社会の医療制度の設計時に参考にできるシミュレーション結果を提示できることを目指す。 なお、季節性インフルエンザの自治体内での流行を解明するためのシミュレーション研究については、公衆衛生及び感染症の領域にて需要がある。そのため、日中の医療機関受診モデルの改良する際に、季節性インフルエンザの流行を考慮することで、現実社会での季節性インフルエンザの流行が表現できることを意識する。 研究開始時に平成28年度から取り組む予定としていた介護制度モデルについては、平成27年度後半からAEDに関する研究に取り組み始めたことを踏まえて、平成29年度以降に先送りにする。
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Research Products
(10 results)