2016 Fiscal Year Annual Research Report
パーキンソン病治療用多機能ハイドロゲルの実用化に向けた階層的評価
Project/Area Number |
15H05353
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
中路 正 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 准教授 (10543217)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | キメラタンパク質 / ハイドロゲル / ドーパミン神経 / 細胞移植 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに、パーキンソン病の有力な治療法と考えられている神経前駆細胞移植において、移植細胞生着率の大幅向上と、生体内での細胞制御が可能なハイドロゲルシステムの開発に成功し、パーキンソン病の病態を大きく改善できることを見出した。これは、パーキンソン病治療の大きな発展につながる(論文投稿中)。しかしながら、ドーパミン神経網と他の神経網との連結など、どのようなイベントが起こり病態改善まで至るのか未だ全容がつかめていない。そこで、不明な点の解明および知見の集積を進め、開発したハイドロゲルシステムの有効性を立証することで、実用化への足掛かりを築くこと目的としている。 本年度は、前年度から継続して検討してきた、①移植した細胞の組織内でのドーパミン神経への誘導の経時的な追跡、および、②神経網再建とハイドロゲルの消失・移植細胞の組織への統合に関する評価を行ってきた。①について、前年度は、神経前駆細胞からドーパミン神経への段階的な誘導を観察できたのみであったが、ネットワーク形成に関しても経時的に認められた。前年度の結果と一致しており、やはり、ドーパミン神経への分化と共に、アストロサイトへの分化が4割程度程度認められ、in vitro で得られていた結果とかなり異なる結果となった。この点について、ホスト細胞の浸潤であるかを評価するために、GFP 恒常発現細胞を用い、移植細胞とホスト細胞をトレースできる仕組みで評価した結果、アストロサイトはホスト由来であることがわかった。②は、MRI によるハイドロゲルの消失と合わせ、組織学的な評価も合わせて行い、約3ヶ月程度で消失していることが裏付けられた。本年度は、上記の成果に加え、細胞移植によって挫滅した線条体に再形成されたドーパミン神経網の運動野などへの統合に関する調査を始めたが、現在も継続評価中である。また、これまでの材料の改良についても検討を始めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
in situ でのドーパミン神経への分化に関する経時的評価に関して、昨年度の若干の遅れを本年度取り戻し、「ドーパミン神経は移植細胞由来であり、アストロサイトやミクログリアはホストから供給された細胞、つまり、移植細胞は、ホスト細胞と統合していることを明確にする結果である」という結論を得た。移植ゲルの消失とホスト組織との統合についても、前述の実験と合わせて評価でき、「MRIで得られた3ヶ月程度で全消失」という結果と組織学的評価が大体一致する結果を得た。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度、評価をスタートさせた、再生線条体の神経網の他脳組織との接合に関する検討を引き続き進める。また、本年度新たに、現在の移植用ゲルの改善・改良に関する予備実験を始めており、来年度は、本格的に実験を進める。また、本年度、「ホスト由来のアストロサイトの浸潤と統合」という結果を得たが、それをin vitro で再現できないかと考えており、その予備検討も進めて行こうと考えている。
|
Remarks |
※ 4th TOYAMA-BASEL JOINT Symposiumにおいてポスター発表賞を受賞した。 ※ 本研究課題を拡大させ、国際共同研究(オーストラリア・CSIRO)を進める計画が立ち上がっている(本格始動は、2017年度)
|
Research Products
(10 results)