2016 Fiscal Year Annual Research Report
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15H05364
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
本橋 紀夫 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (50532727)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 骨格筋 / 筋線維タイプ / 代謝 / 幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨格筋は肥大・萎縮をする可塑性を有すると共に,筋線維タイプ(遅筋・速筋)とそれに伴う代謝変換能(酸化系・解糖系)を有する. 各種運動による筋肥大時, 或は加齢や不活動に伴う筋萎縮の過程でも筋線維タイプ変換が生じるが, 詳細なメカニズムは明らかではない. 本研究では, ①筋線維タイプ変換を惹き起こす生体内因子・薬剤を網羅的に探索し, 骨格筋線維タイプ変換メカニズムを明らかにする事, さらに②筋線維タイプ変換誘導因子を用いて加齢や不活動による筋萎縮に対する予防・治療法開発を将来的目標としている. これまでに, 全ての筋線維タイプを蛍光蛋白で生きたまま識別できるマウス筋細胞を用いて, 筋線維タイプ変換を惹き起こす生体内因子・薬剤を網羅的に探索し,遅筋線維(Type I)或は速筋線維(Type IIB)を誘導する因子を複数同定した. さらに筋線維タイプ変換は, 代謝機能を伴う変換であり, 遅筋を誘導する因子は主にミトコンドリア代謝能が, 速筋を誘導する因子は主に解糖能が亢進している事を明らかにしてきた. 平成28年度は, In vitroで筋線維タイプ変換を確認した生体内因子・薬剤がin vivoにおいても同様に変化を誘導するか否かを確認する為, 野生型マウスに対して筋線維タイプ変換誘導因子・薬剤の投与を行った. 新規遅筋誘導因子をマウスに投与した結果, 生体内においても遅筋を誘導し, In vitroで得られた結果は, 生体内でも同様の現象が起こりうる事を示唆していた. さらにこの因子は, 生体内においてSDH及びNADH活性を低下させる事が明らかとなった. 筋線維タイプ変換に関わる新規シグナル経路を解明する為, 筋線維タイプ変化を誘導する既知遺伝子(Sirt1, PGC-1α) を筋特異的に欠損したマウスを樹立した. これらを用いた結果, 新規遅筋誘導因子はSirt1を介して遅筋を誘導している事が明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は, ①In vitro実験系で得られた筋線維タイプ変換を誘導する生体内因子・薬剤がin vivoにおいても同様に誘導するか否かを確認する事, ②筋線維タイプ変化を誘導する既知遺伝子を筋特異的に欠損したマウスを樹立し, 同定した筋線維タイプ変換誘導因子・薬剤を添加して, 筋線維タイプ変換を誘導するシグナル経路を明らかにする事を目標としていた. マウスへの投与実験により, In vitroで得られた候補因子・薬剤は, 生体内でも同様に筋線維タイプ変換誘導を惹き起こす事が明らかとなった. 同時にSDH及びNADH活性も変化させ, 骨格筋代謝機能にも影響を与え, 予想通りの結果が得られた. また, 筋線維タイプ変換を誘導する既知因子である Sirt1やPGC1αが骨格筋特異的に欠損した筋細胞株を樹立する事ができ, これらの細胞を用いる事で筋線維タイプ変換に関わるシグナルを明らかにしつつある. これまでに同定した新規遅筋誘導因子はPGC-1aよりもむしろSirt1を介して遅筋を誘導している事が分かった. 更に現在では, 筋線維タイプ変換誘導因子の欠損あるいは過剰発現マウスを購入・作成を行っており, 随時解析を行う予定である. 以上の通り, 研究計画はおおむね予定通り進行している.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた結果をふまえて, ①同定した筋線維タイプ変換誘導因子の欠損あるいは過剰発現マウスを用いて筋線維タイプ変換メカニズムの本質に迫る. 遺伝子改変マウスから採取した骨格筋における筋線維タイプの分布を免疫染色法・遺伝子発現などを用いて評価し, 同定した候補遺伝子が筋線維タイプ変換を制御するか否かを判断する. 加えて, ②筋重量を測定し, 同定した候補遺伝子と筋肥大・萎縮の関連を評価する. 更に, ③筋萎縮モデル(加齢性筋萎縮, 廃用性筋萎縮等)マウスを用いて, 筋線維タイプ変換を誘導する生体内因子・薬剤の投与し, 筋線維タイプの変化及び筋萎縮を抑制できるか否かを検討する. 加齢性筋萎縮に対する筋線維タイプ変換誘導因子の効果を確かめるため, 老齢マウスに対して筋線維タイプ変換誘導因子・薬剤を投与し, 筋萎縮の予防・運動機能の改善・寿命延長効果があるか否かを検討する.
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Research Products
(5 results)