2016 Fiscal Year Annual Research Report
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15H05378
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Research Institution | Tokyo National Museum |
Principal Investigator |
土屋 貴裕 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部, 主任研究員 (40509163)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 日本美術 / 絵巻 / 伝来 / 模本 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、絵巻の研究を従来顧みられることのなかった伝来や鑑賞歴といった作品の付属情報から捉え直し、推進する。研究にあたっては、絵巻の伝来、鑑賞歴に関わる情報を収集・蓄積した上で、絵巻が今日に至るまでにどのような軌跡を経て伝世したのかという、各作品の通時的な歴史性に配慮し、絵巻という媒体全体を視野に入れた総合的な分析を行うことを最終的な目標として設定している。本年度は以下の成果をあげることができた。 (1)古代中世の文献資料に記載された絵巻関係資料の抜き出しとデータ化:本研究が主な対象とする古代中世絵巻の伝来、鑑賞情報を得るためには、日記、古記録等の文献資料を博捜し、そこに記載された本文を整理する必要がある。抜き出しにあたっては、絵巻のみならず仏画、肖像画、屏風等、絵画関係の記事をピックアップし、本年度はおよそ8タイトルの文献資料から約1,150件の記事を抜き出し、その一部をデータ化した。 (2)東京国立博物館所蔵絵巻模本の調査:絵巻模本の多くは近世に作られたが、その制作に際して、所蔵者や伝来等の情報が記されている場合がままある。本研究では、東京国立博物館所蔵絵巻模本の悉皆調査を目指し、目録の整理、撮影、所蔵者や伝来、模写者等の情報を収集すべく、模本リストの整理を継続して行った。本年度は約30件の調査を行うことができた。 (3)絵巻詞書のデータ化:絵巻作品の文字情報には伝来などについて記すものもある。そこで公刊されている絵巻作品の詞書及び伝来情報のデータ化を進め、本年度は18タイトルの入力を終えた。 (4)調査・研究の展示での公開:上記の調査・研究を踏まえ、以下の展示として成果の一部を公開した。①特集「歌仙絵」東京国立博物館特別1・2室 平成28年10月17日~11月27日、②特集「春日権現験記絵模本Ⅱ―神々の姿―」東京国立博物館平成館企画展示室 平成29年1月17日~3月12日
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
科学研究費助成事業4年計画の2年目である本年度は、当初計画にのっとり、文献資料記載絵巻関係資料の抜き出しとデータ化、絵巻模本の調査、絵巻詞書のデータ化という、本研究推進にあたっての基礎作業を着実に進めることができた。あわせて、調査・分析を展覧会という形で一般向けに行うことができたのは大きな成果と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
29年度も引き続き、継続的に資料の収集、作品調査を進め、その成果を反映した研究を進めたい。 とりわけこれまでは、研究成果の公開(展覧会等)を主に絵巻をテーマとしたものに絞って行なってきたが、次年度以降は絵巻を含む古代・中世の絵画作品へと視野を広げるべく、調査研究の対象範囲を絞り込んでいきたい。
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Research Products
(9 results)