2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H05380
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
吉岡 乾 国立民族学博物館, 民族社会研究部, 助教 (20725345)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 言語学 / 記述言語学 / ブルシャスキー語 / カティ語 / カラーシャ語 / カシミーリー語 / ドマーキ語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、パキスタンのギルギット・バルティスタン自治州フンザ・ナゲル県モミナバード村などで話されている、危機言語であるドマーキ語を中心にしつつ、周辺言語も併せて、現地調査によって得られたデータを基に言語記述をしていくことを目的としている。 本年は現地調査を夏(インド北西部ジャンムー・カシミール州スリナガル市;①②)と秋(パキスタン北西部カイバル・パクトゥンクヮー州;③)の計二度実施し、主に以下の内容で調査成果を挙げた。①ブルシャスキー語のスリナガル市内での話者集団の所在を探り当て、基礎語彙・物語の収集などを行った。②カシミーリー語の基礎語彙の収集をした。③カティ語ならびにカラーシャ語の文法調査、談話データ収集、語彙・例文収集を行った。ドマーキ語などの調査は、初春にパキスタン北東部へ行く予定であったが、政情の乱れがあったため見送った。 ①スリナガル市のブルシャスキー語に関しては、先行研究で存在は示されていたが、具体的な居住区画の記述がなかったため、現地へ赴いて実際の話者を見付け、調査を開始した。先行研究での記述も少なく、研究代表者のこれまでに調査をして来た方言との比較対照を今後進めて行くことで、新たな発見が期待される。 ②カシミーリー語は、先行研究はそれなりにあるが、ドマーキ語の周辺を包囲しているインド・ヨーロッパ系統の言語と同系の言語の中で、最大の話者数を持った言語であるため、調査によって知識を持つことは対照言語学的に大切なことである。 ③カティ語(インド・イラン語派ヌーリスタン語派)とカラーシャ語(インド・イラン語派インド語派)の調査は、前回(2008年)の調査の続きとして、主に反響語の調査と調査票からの例文収集を行った。所謂ダルド語群の東端が②のカシミーリー語、西端が③のカラーシャ語に当たる。 成果公開は、国際学会で2回、国内学会で1回口頭発表をしたほか、英語で論文を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
インド北西部ジャンムー・カシミール州で夏に反政府デモ、外出禁止令発布などがあり、パキスタンで1月の中頃に爆弾テロが続き、100余名が犠牲になるなど、政情不安があり、思うように現地調査を進められない。 そういった場合に備えて用意した、別切り口での調査・研究を優先的に実施している部分があり、従って新規に得る知識が多いため、どうしても進度が低下した。但し、こうして得られた周縁的な情報は、後に必ず役に立つものであることは疑いがない。本研究課題の枠を超えて見れば、順調であるが、研究課題の中でだけ考えた場合には、遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
丸一年触れられなかったドマーキ語[1]の次回調査を急ぐ。(番号は末尾の地域割に対応) その他の言語に関する研究の優先順位としては、ブルシャスキー語スリナガル方言[2]、カティ語[3]、シナー語[1]、ブルシャスキー語ヤスィン方言[1、3]、コワール語[3、1]を考えている。今年度で、地理的に連続する範囲では目一杯手を広げた形になっているので、遠隔のロマニー語にまで手を広げるのは、本研究課題中は避けることと決めた。 成果目標としては、ブルシャスキー語フンザ・ナゲル方言の記述文法の仕上げと、ドマーキ語の文法記述を進めるのを第一とし、合間に機会があれば諸言語の文法項目についての成果発表もしていくというスタンスで進める。 平成29年度は、[1]パキスタン北東部、[2]インド北西部、[3]パキスタン北西部の優先順で、最大3回、現地調査を実施する。
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Research Products
(6 results)