2015 Fiscal Year Annual Research Report
「原子層を動かす」技術に基づく二次元ナノ構造の構築
Project/Area Number |
15H05412
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
宮田 耕充 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (80547555)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 原子層物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、「動く原子層」としてのWS2, MoS2等の遷移金属ダイカルコゲナイド(TMDC)原子層の結晶を、化学気相成長法によりグラファイトや窒化ホウ素のへき開面に成長させた。ここで、グラファイトや窒化ホウ素は、原子レベルで平坦かつ清浄な基板として利用している。特に、TMDC原子層の、サイズ、結晶形状、層数の制御を目指した成長条件の検討を行った。具体的には、自作の化学気相成長システムを用い、硫黄ガスと遷移金属酸化物(WO3, MoO3、等)をアルゴンガスで反応部に輸送し、基板上で結晶成長を行う。この時、グラファイトや窒化ホウ素それぞれの基板について、硫黄や金属の供給量や流路の分離、成長温度等についての条件検討を行ってきた。また、ナノマニピュレーションシステムを用いて、原子層のスライドに関する実験を進めた。具体的には、タングステン等の金属の短針をTMDC結晶に接触させ、水平方向に動かすことで異なるTMDC結晶との接触、積層が可能なことを見出してきた。また、結晶に局所的な歪みを導入することにも成功した。歪みについては、ラマンや発光マッピングを利用して確認し、局所的なバンドギャップの制御に適用可能であることを実証した。また、グラファイト基板の外まで結晶を押し出すことで、中空に浮いた状態でWS2原子層を保持することも可能となる。このような浮いた原子層は、基板上と比較し、強い発光スペクトルを示すことなどを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遷移金属ダイカルコゲナイドに関する成長技術の改良、および原子層をスライドさせた構造制御にも成功し、研究が順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
主に、光学顕微鏡観察下での原子層のスライド技術の確立、様々なナノ構造の作製、ナノプローバを用いた物性計測を進めていく。スライド技術に関しては、これまで電子顕微鏡観察を行いながらの実験では安定に原子層を操作可能であったが、電子線によって試料に多量の不純物が吸着する問題があった。この課題を解決するために、光学顕微鏡観察を行いながら安定に操作可能な技術の確立を目指していく。具体的には、適切なプローブの選択や装置・試料の配置を改良し、試料にダメージを与えずに一定の力を加えられる実験系を整える。より、操作や観察をスムーズに進めるために、試料作製の点からグレインサイズの向上にも取り組む。また、プローブと試料の間で電気的なコンタクトを取るための適切なプローブの種類や前処理についても検討を進める。これらの要素技術を確立させ、ナノ構造の構築と物性計測を行う予定である。
|
Research Products
(8 results)