2015 Fiscal Year Annual Research Report
低分子系および高分子系有機半導体のための大規模電子伝導計算理論
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15H05418
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
石井 宏幸 筑波大学, 数理物質系, 客員准教授 (00585127)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 有機半導体 / 電子伝導 / 計算物理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、独自に開発してきた電子伝導計算理論「時間依存波束拡散法」を発展させ、次世代デバイス材料として期待される低分子系および高分子系有機半導体の未知な伝導機構を解明し、定量的にその移動度等を予測することである。 高分子系(ポリマー鎖)の伝導において重要な鎖の回転(ねじれ)の自由度は、今まで私が研究してきた低分子系でも重要である。従来国内外で行われてきた低分子系の伝導計算では、分子間振動を記述する際に、分子の重心移動しか考えていないが、実際には分子の回転の影響も大きい。この事実が、計算において移動度を過大評価してしまう要因の一つと考えられる。 そこで本年度は、本伝導計算理論に分子の回転の自由度を取り込み、低分子系有機半導体の伝導物性における分子回転の影響を明らかにし、移動度の定量的評価の精度向上を目指した。当初の予定では、Gay-Berneポテンシャルを用いた分子動力学計算を用いることで分子の回転の自由度を導入する予定であったが、安定構造として実際の有機半導体の結晶構造を再現することが困難であった。ファンデアワールス相互作用を入れた密度汎関数理論からGay-Berneポテンシャルを作成したが、分子間の空間異方性をGay-Berneポテンシャルの枠組みの中で再現することが出来なかったことが一因と考えられる。そこで現在、基準振動解析計算を使って、解析的に回転の影響を伝導計算に取り入れることを目標に研究を進めている。粗視化したGay-Berneポテンシャル法と比べると、全原子計算となるために、分子内振動も扱える利点がある。より計算精度の高い計算になると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、Gay-Berneポテンシャルによる分子動力学計算法の導入によって、分子回転の自由度を取り入れることを目指していたが、実際の有機半導体の結晶構造を再現することが出来ず、方針転換をしたため。現在では、基準振動解析に基づく電子-フォノン相互作用を伝導計算理論に導入する方法の開発を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、低分子系有機半導体を対象に、基準振動モードを使って解析的に回転の影響を伝導計算に取り入れることを目標に研究を進める。
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Research Products
(3 results)