2015 Fiscal Year Annual Research Report
プラズマ活性溶液を用いたがん治療とその作用機序の解明
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15H05430
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
田中 宏昌 名古屋大学, 未来社会創造機構, 講師 (00508129)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | プラズマがん治療 / プラズマ医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
プラズマナノ工学研究センターにより開発された様々な超高電子密度大気圧プラズマ発生装置を用いて、照射時間、照射距離など様々な条件でプラズマ活性溶液を作成し、MTSアッセイにより様々な細胞に対する細胞殺傷能の評価を行った。次に細胞死にいたる生存・増殖シグナリングネットワークのハブとなる分子(例えば、PI3K-AKTシグナル伝達経路における活性型AKTやRAS-MAPKシグナル伝達経路における活性型ERK1/2など)がプラズマ活性溶液によりどのような影響を受けるかなどをウェスタンブロッティング法などを用いて調べた。 次にノックアウトセルラインなどを用いて生存・増殖シグナリングネットワークを人工的に加工した系におけるプラズマ活性溶液の効果を調べた。結腸がんPTENノックアウトセルラインにおいては、PI3K-AKTシグナル伝達経路が恒常的に活性される。結腸がんPTENノックアウトセルラインとその母細胞(PTENがワイルドタイプ)のプラズマ活性溶液に対する感受性の違いを調べた。更にウェスタンブロッティングにより結腸がんPTENノックアウトセルラインにおいてどのようなシグナル伝達経路が影響されるかを調べた。 名古屋大学医学系研究科内の産婦人科、生体反応病理学等7以上の診療科及び基礎講座、岐阜薬科大学、九州大学等5以上の学外の研究機関とプラズマ活性容器に関する共同研究を進め、これまでの成果を2報以上review論文としてまとめ公表した。3件の国際会議での招待講演、5件の国内会議での招待講演を行った。またAEPSE2015と呼ばれる国際会議でYoung Scientist Awardを受賞した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
以前の研究成果として、プラズマ活性培養液による脳腫瘍培養細胞のアポトーシス誘導について、細胞内活性酸素種等を用いた何らかの形での生存・増殖シグナリングネットワークの抑制を細胞内分子機構として提案していたが、名古屋大学内あるいは国内での数多くの共同研究を通して、更に様々なプラズマ条件や細胞種の違いにより様々な細胞内分子機構により細胞応答が引き起こされることが分かってきた。それらの内容をレビューとしてまとめ、数報論文を報告した。 現在までに、名古屋大学医学系研究科産婦人科、消化器外科との共同研究により、プラズマ活性溶液の卵巣癌、胃癌、膵癌の腹膜播種治療への研究を推進した。また、生体反応病理学との共同研究により、プラズマによる酸化ストレスの評価及び安全性に関する研究を推進した。眼科との共同研究によりプラズマ活性溶液の加齢黄斑変性への治療の有効性が示された。岐阜薬科大学との共同研究により、プラズマ活性溶液の細胞応答に関する細胞内分子機構の解明が進んだ。プラズマ活性溶液の安全性に関しては、九州大学や愛知県がんセンターにもプラズマ活性溶液を送付することにより共同研究を進めている。その他、東京大学、大阪大学、熊本大学にもプラズマ活性溶液を送付しプラズマがん治療研究を推進している。イタリアで開催されたプラズマ溶液研究会や米国で開催されたプラズマ国際がん治療ワークショップなどで招待講演を行い、これまでのプラズマ活性溶液の成果を世界にアピールした。
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Strategy for Future Research Activity |
様々な細胞に対して、様々な条件で作成したプラズマ活性溶液を投与することにより細胞種及びプラズマ活性溶液の違いによる細胞応答の違いを調べる。特にプラズマ活性溶液は臨床応用に向けて成分をデザインしたいわゆる次世代プラズマ活性溶液の効果を調べてゆく。細胞種やプラズマ活性溶液の種類の違いによる細胞内分子機構の違いを明らかにするために、生存・増殖シグナリングネットワークや酸化ストレス応答に関する細胞内分子への影響を中心にウェスタンブロッティング法や免疫蛍光染色法等を用いて調べる。 上記の実験結果に基づき様々ながん細胞と上皮系正常細胞とのシグナリングネットワークの違いをプラズマ活性溶液が生存・増殖シグナリングネットワークに与える影響(特にフィードバック構造などに注目)から考察し、プラズマ活性溶液ががん細胞に対して選択的にアポトーシスを誘導する作用機構及び細胞の種類による感受性の違いの細胞内分子機構の解明を目指す。 様々なプラズマ活性溶液の遺伝子発現の変化を調べるためにマイクロアレイ実験を行う。申請者らが行った予備的な実験結果よりアポトーシス関連遺伝子、分泌性分子に関する遺伝子などさまざまな遺伝子発現の変化が確認された。本研究ではリアルタイムPCR法によりこれらの遺伝子発現の変化を確認するとともに、既存のシグナリングネットワークと照合し、どのようなシグナリングネットワークに影響を与えているのかを示す包括的な細胞内分子機構モデルを構築する。
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Research Products
(15 results)
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[Journal Article] Effectiveness of plasma treatment on pancreatic cancer cells2015
Author(s)
N. Hattori, S. Yamada, K. Torii, S. Takeda, K. Nakamura, H. Tanaka, H. Kajiyama, M. Kanda, T. Fujii, G. Nakayama, H. Sugimoto, M. Koike, S. Nomoto, M. Fujiwara, M. Mizuno, M. Hori, Y. Kodera
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Journal Title
International journal of oncology
Volume: 47
Pages: 1655-1662
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Plasma with high electron density and plasma-activated medium for cancer treatment2015
Author(s)
H. Tanaka, M. Mizuno, K. Ishikawa, H. Kondo, K. Takeda, H. Hashizume, K. Nakamura, F. Utsumi, H. Kajiyama, H. Kano, Y. Okazaki, S. Toyokuni, S. Akiyama, S. Maruyama, S. Yamada, Y. Kodera, H. Kaneko, H. Terasaki, H. Hara, T. Adachi, M. Iida, I. Yajima, M. Kato, F. Kikkawa, M. Hori
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Journal Title
Clinical Plasma Medicine
Volume: 3
Pages: 72-76
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Presentation] Responses of cells in plasma-activated medium2015
Author(s)
Hiromasa Tanaka, Masaaki Mizuno, Kenji Ishikawa, Keigo Takeda, Hiroshi Hashizume, Kae Nakamura, Hiroaki Kajiyama, Hiroyuki Kano, Yasumasa Okazaki, Shinya Toyokuni, Shoichi Maruyama, Yasuhiro Kodera, Hiroko Terasaki, Tetsuo Adachi, Masashi Kato, Fumitaka Kikkawa, and Masaru Hori
Organizer
68th Annual Gaseous Electronics Conference/9th International Conference on Reactive Plasmas/33rd Symposium on Plasma Processing
Place of Presentation
Hawaii
Year and Date
2015-10-12 – 2015-10-16
Int'l Joint Research
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[Presentation] Cellular And Molecular Responses Of Plasma-activated Medium Treated Cells2015
Author(s)
Hiromasa Tanaka, Masaaki Mizuno, Kenji Ishikawa, Keigo Takeda, Hiroshi Hashizume, Kae Nakamura, Hiroaki Kajiyama, Hiroyuki Kano, Yasumasa Okazaki, Shinya Toyokuni, Fumitaka Kikkawa, and Masaru Hori
Organizer
The 10th Asian-European International Conference On Plasma Surface Engineering
Place of Presentation
Jeju
Year and Date
2015-09-20 – 2015-09-24
Int'l Joint Research
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