2016 Fiscal Year Annual Research Report
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15H05434
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Research Institution | Japan Synchrotron Radiation Research Institute |
Principal Investigator |
犬伏 雄一 公益財団法人高輝度光科学研究センター, XFEL利用研究推進室, 研究員 (40506250)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 量子ビーム / X線自由電子レーザー / レーザー / プラズマ / X線分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は外部励起源を用いたX線増幅手法の開発であり、励起源として高強度光学レーザーを固体サンプルに照射した際に生成される高エネルギーの電子(高速電子)を用いている。この高速電子が固体中を伝搬する際に、内殻電離状態が生成される。本研究ではここに、その内殻電離状態から放射されるKα線と同じ光子エネルギーのXFELを照射することで誘導放出を起こし、X線増幅を行った。 これまでの研究では銅(Cu)を試料として用いた実験においてX線増幅と考えられる信号が取得されており、今年度は、その物理機構解明のために、高強度光学レーザー照射により生成されるプラズマの診断を実施した。そのために分解能、観測範囲の異なる2つのX線スペクトロメーターを開発し、計測を行った。低分解能広観測領域のスペクトロメーターでは、CuのKα線からHeα線までを観測対象としていたが、実際の計測において観測されたのは、Kα線のみであり、電離が進行した際に放射されるKαの高エネルギーシフト成分は観測されなかった。この結果は、Cuの電離がL殻まで進行していないことを示しており、本研究で対象としているKα線が効率的に放射されていることがわかった。また、高分解能スペクトロメーターでは、光学レーザー生成プラズマからの放射されるKα線を計測した。そのKα線の半値幅はおよそ5eVであり、Kα線の自然幅(2eV)よりも太くなっていることがわかった。これはプラズマ中の電子密度の効果と電離度分布が影響していると考えられる。一方、本研究におけるX線増幅スペクトルは0.6eVと非常に細く、通常のKα線の遷移ではなく、プラズマ中の過渡的な遷移の誘導放出によりX線が増幅されていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Cuをゲイン媒質として高強度光学レーザーとXFELを組み合わせた実験において、本研究の最大目標であったX線増幅は達成されており、研究はおおむね順調に進展している。また、増幅の物理過程を調べるために必要なプラズマ診断系として、2種の発光X線スペクトロメーターも順調に立ち上がっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、増幅スペクトル計測と、発光スペクトル計測によるプラズマ診断を組み合わせ、X線増幅の高効率化を図る。光学レーザーの照射条件、試料の厚さなどを変えことで最適条件を探索する。更に、今年度共用予定のSACLAの500TWクラスのハイパワーレーザーの利用のための準備をすすめる。このレーザーが利用できれば、増幅スペクトルの出力の劇的な増大が見込める。 また、これらの成果をまとめ、発表する。
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Research Products
(1 results)