2015 Fiscal Year Annual Research Report
シグマ陽子散乱の位相差導出によるクォークパウリ斥力芯の大きさの決定
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15H05442
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
三輪 浩司 東北大学, 理学研究科, 助教 (50443982)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ストレンジネス核物理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、シグマ核子相互作用を研究するためにシグマ陽子散乱実験を行い、微分断面積を導出することを目的としている。そのために、シグマの生成および散乱標的として用いる液体水素標的を開発し、また反跳された陽子を検出するための円筒形ファイバー検出器(CFT)およびBGOカロリメーターからなるCATCH検出器群を製作することが本年度の大きな目的であった。 液体水素標的に関しては、φ40mm、長さ300mmの円筒形の標的セルを製作し、また標的用の真空チェンバーをデザイン、製作し、GM冷凍器を用いた冷却システムを用いることによって、液化テストにも成功し、標的システムとしては完成させることが出来た。 また、円筒形ファイバー検出器(CFT)は、ビーム方向にまっすぐにファイバーを配置するφ層、および螺旋状に配置するUV層をそれぞれ4層ずつ配置する円筒型の位置検出器である。これを製作するにあたり、1つのフレーム構造にφ層およびUV層を1層ずつ配置し、最終的には4つのフレームをドッキングすることによって8層構造を実現するデザインとなっている。今年度までにすべてのフレーム構造の製作を終了することが出来た。このCFTでは約5,000本のファイバーを読み出すにあたって、同数のMPPCを用いる。この読み出しには我々のグループがMPPCの多チャンネル読み出し専用に開発したVME-EASIROCボードを用いることによって実現した。合計で約80枚のVME-EASIROCボードを用いるが、システム全体で読み出しに生じるデッドタイムは14μsであり、10 kHzのトリガーに対しても、十分なDAQ効率を得ることが可能である。 BGOカロリメーターに関しては、高計数率環境下でのパイルアップを分離するためにフラッシュADCを用いた読み出しシステムを構築し、700kHzの80MeVの陽子ビームに対しても1.3%の十分なエネルギー分解能を得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
液体水素標的に関しては、製作がすべて終了し、液化テストにも成功しており、すでに実用のレベルに達することが出来ている。 CFTに関しては、製作は以前の研究から引き継いだものであるが、ようやく全ての層の製作を完了することが出来た。読み出し回路に関しても、一番懸念していたのが読み出しデータの増大による読み出しスピードの低下であったが、ADCにペデスタルサプレッションを施すことによって14μsの十分速い読み出し時間を達成することが出来た。 BGOカロリメーターに関しても、実際に80 MeVの陽子ビームをビームレートを変えながら、BGOのエネルギー分解能を測定する実験を行い、予想される最大のレートである700 kHzでも1.3%という十分なエネルギー分解能が得られることを確認することが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方針としては、CFTとBGOカロリメーターを組み合わせてCATCHシステムとして全体を構築することである。そのためにCFTとBGOカロリメーターをマウントする架台を製作する。またCATCHシステムをK1.8ビームラインに配置するための架台製作も平行して行う。 CATCHシステムを構築した後に、CFTおよびBGOカロリメーターのすべてのチャンネルの読み出しを行い、宇宙線を用いたテストを行う。その後、東北大のサイクロトロンの80MeVの陽子ビームを用いてpp散乱およびpd散乱を行い、システム全体のチェックを行う。特にここではCFTで求めた散乱角度とBGOカロリメーターでのエネルギーから弾性散乱事象を同定することが出来ることを確認する。またCFTでのエネルギー損失(ΔE)とBGOでの全エネルギー損失(E)の関係から陽子の粒子識別ができること、また宇宙線と陽子が5σ以上の分離能力で分離出来ることを確認する。これらを通してCATCHシステムの開発を完了させる。 また、シグマ生成を同定するためにπ+p --> K+Σ+反応を用いるが、この反応で生成されるK+を同定するために我々はKURAMAスペクトロメーターを用いる。ここでバックグラウンド事象としてスペクトロメーターに入ってくるπ+をトリガー段階で除去するためのエアロゲルチェレンコフ検出器を開発する予定である。この検出器もまた高ビームレート環境下にさらされるため、東北大学電子光理学研究センターの電子ビームを用いてテストを行うことを計画している。
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Research Products
(9 results)