2015 Fiscal Year Annual Research Report
ミュオン水素原子超微細構造エネルギー測定手法の確立
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15H05450
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
佐藤 将春 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 協力研究員 (50554044)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ミュオン / 超微細構造 / レーザー分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度は水素ガス標的クライオスタットの製作を行い、第一段階としてテストガスセルを用いた冷却試験をGM冷凍機を用いて行った。PID制御を用いた温度コントローラを使用し安定して20Kでガス標的を保持する事に成功した。テストはヘリウムガスで行ったが水素ガスでも同様の結果が得られると考えている。並行して崩壊電子検出器の試作を行った。シンチレータの両端にMPPCを取り付け、読み出しにはJ-PARCミュオン施設μSR分光器で開発中のKalliopeボードを使用し読み出しを行った。これらのカウンター試作はRIKEN-RALにおける超低速ミュオン源開発グループと共同で行い、2015年9月、12月とRIKEN-RALポート3(超低速ミュオン用実験エリア)に於いてカウンターの動作性能の確認を行った。これらは表面正ミュオンで行ったが、崩壊負ミュオンを用いる場合その強度が低いため、正ミュオンで動作すれば、問題無く負ミュオンでも動作すると考える。2016年3月には負ミュオンを用い、試作したタングステンセルに負ミュオンを静止させた時のバックグラウンド評価を行った。この結果、予想していなかった負ミュオンに同期した長寿命バックグランドが存在する事がわかり、通常のμSR分光器で用いているような片側読み出し用検出器ではバックグラウンドが除去できない可能性があることが分かった。このバックグランド事象に関しては引き続き次年度詳細な調査を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水素ガス標的の開発に関しては、基礎的な冷却試験は完了し、想定していた手法によって安定して低温ガス標的を保持できると考えている為、今後この方針で製作を進めていく。基礎冷却テストは銅製の標的セルを用いて行ったが、実機には負ミュオン原子核吸収過程を利用する為、タングステン等の大きい原子番号をもつ材質を用いて製作する必要がある。当初、材質・設計・加工業者の選定等に時間を要したが、結果タングステンを用いたセルの試作を完了する事が出来た。これを用いた冷却試験は次年度に予定している。一方で、そのタングステンセルを用いたビームテストを3月に行う事が出来たのは非常に大きな進展である。ビームテストの結果、予期していなかった長寿命バックグランドが存在する事が判明したが、これはタングステンセルに起因するものではなく、ミュオンビームラインに起因する事が判明している。これは不測の現象ではあるがカウンター製作において非常に有用な情報を得ることが出来たと考えている。 以上のようにして、本研究では測定手法を確立を目指したものであるが、次年度に研究・開発していくべき対象を非常に明確にすることが出来た為、計画は順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度は、昨年度に行ったビームテストの結果存在が明らかとなった長寿命バックグランドの対策をRIKEN-RALビームラインに於いて行っていく。これまでは既設のμSR分光器を用いて行ったが、μSR分光器では時間情報しか取得しない為、今年度にはプラスチックシンチレーターを光電子増倍管でADC,TDC情報を取ることによって長寿命成分の原因を追究していくと共に、実機として用いる崩壊電子検出器の形状を決定する。その為、試作をいくつか製作しRIKEN-RALビームラインにおいて動作性能を確認するのが今年度の中心的な予定となる。並行して、試作したタングステンセルの冷却試験を行うと共に、負ミュオンを静止させてバックグラウンドの実測する事でタングステンセルが実機として使用できるかどうかの評価を行う。可能とわかればレーザー入射窓のサイズ形状及び標的セル内に設置する高反射率ミラーの形状を決定する事によって、標的セルの形状を決定し、実機製作に着手する。
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Research Products
(5 results)