不安定核の陽子中性子分布で解明する中性子核物質の状態方程式

2016 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 15H05451
• Research Institution: Institute of Physical and Chemical Research
• Principal Investigator: 銭廣 十三 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 研究員 (70529057)
• Project Period (FY): 2015-04-01 – 2019-03-31
• Keywords: 中性子核物質状態方程式 / 不安定核陽子弾性散乱測定 / 大強度RIビーム実験

Outline of Annual Research Achievements

2016年4月から5月にかけて理化学研究所仁科センターRIBFにおいて、本研究課題の最も重要な架台である、錫132を含む核子あたり200MeV/uのRIビームと1mm厚固体水素標的を用いた逆運動学陽子弾性散乱測定を世界で初めて実施した。本実験ではこれまでにない大強度の重いRIビーム(~1MHzで原子番号50付近)を用いるため既存の検出器での安定した測定は非常に困難であったが、本研究課題で開発してきた検出器や測定手法を集約することで本測定が可能となった。また、本実験は、同じRIビームを使うが全く別の実験とビームを共有することで、同時期に2種類の測定を行うという新しい手法を初めて実施した。これにより測定のさらなる効率化が期待できることとなった。また、本測定の成果報告を2017年3月の物理学会において行った。
2016年6月には同RIBFにおいて我々の検出器と偏極陽子標的を組み合わせた実験装置を用いて逆運動学偏極陽子弾性散乱測定を実施した。この測定についても共同実験者による成果報告が2017年3月の物理学会においてなされた。
さらに2016年度冬に放射線医学総合研究所のHIMAC施設において幾つかの新たな検出器開発実験を行ってきた。特にエネルギー損失測定用検出器であるAr(Xe)シンチレータの開発を132Xeビームを用いて行った。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本研究課題の重要な実験である錫132の逆運動学陽子弾性散乱測定に成功したことは非常に大きい成果である。また、より高効率な測定のための検出器開発も進んでおり、開発から測定そして解析へと一定の進展を見ている。しかしRIBFの加速器から供給されるビームの強度は予定していたほど高くなく、他にも様々な外的要因から実施可能な実験の数も限られてくるのでより効率的な開発や測定手法が求められている。

Strategy for Future Research Activity

物引き続き新しい検出器や測定手法の開発を続けると同時に、新しい不安定核での逆運動学陽子弾性散乱実験の提案と実施を進める。
また、個々の開発の成果報告だけでなく、これまでに得られた実験データの解析による中性子核質状態方程式の物理に関する投稿論文の執筆を進める予定である。