2015 Fiscal Year Annual Research Report
天体プラズマの高効率観測に向けた極端紫外光検出器の開発研究
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15H05467
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉岡 和夫 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70637131)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 劣化 / 蒸着 / 光電物質 / 大気圧 / 真空度 / 保管 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、マイクロチャンネルプレートの表面にヨウ化セシウムを蒸着し、極端紫外光に対する感度(量子効率)の変化を調査した。 具体的には、マイクロチャンネルプレートを構成するポア(直径0.012mm)の角度を20度とし、その表面の0.01mm程度の深さにヨウ化セシウムを蒸着した。そのマイクロチャンネルプレートを、15分以内の大気暴露の後に、感度校正用の真空チャンバーにセットした。このチャンバーには、波長30-150nmの単色光を生成するラインが備え付けてあり、波長選択的に検出器の量子効率を測定できる。 また、真空ステージを用いてマイクロチャンネルプレートを移動させ、検出器の面に対して感度一様性、また利得率(光を電子に変換した後に、増幅する際の割合)の一様性を確認した。 これらの結果、一般的に光電物質として用いられるヨウ化セシウムは、従来定説とされていた高真空保管は必須ではなく、0.01気圧程度の低真空でも1年近くは性能維持(量子効率・利得率の安定性)が可能であることが分かった。これは、人工衛星などの飛翔体搭載を考えた場合、その設計の軽量化や、打ち上げ前運用の簡素化(ひいては低コスト化)などに、寄与する成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までに実施した、ヨウ化セシウム光電物質の量子効率向上性能の耐久試験を引き続き行う。ここまで、0.01気圧程度の大気環境化では、性能劣化しないことが分かってきたので、さらに気圧を上げた状態、また窒素封入環境などでの保管を経て、量子効率がどのように変化するのかを見極める。また、一度劣化してしまった光電物質を、再度使用可能なレベルに引き戻す可能性を模索する。具体的には、乾燥環境での保管、ベーキングを想定している。さらに、ヨウ化セシウム以外の光電物質候補を同様の試験に供出し、量子効率向上性能・耐久性能を考慮した最適物質を決定する。なお、上記の実験の下準備として真空蒸着のためのベルジャを改造し、10アンペア以上の大電流を流せるようにする。また、評価用の重水素ランプを設置するためのポートを増設する。
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Strategy for Future Research Activity |
飛翔体への搭載を考えた場合、より現実的な保管方法である窒素環境下での感度変化について調査を進める。特に、大気が混入(湿度)をどの程度まで許容可能か、といった観点で調査する。また、ヨウ化セシウムに拘らず、臭化カリウムやセシウムテルルなどの低仕事関数物質を用いた感度測定を実施し、感度向上性能と保管性のトレードオフができるレベルまでデータを蓄積する。
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Research Products
(2 results)