2015 Fiscal Year Annual Research Report
化学合成微生物群集によるストロマトライト形成の検証
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15H05468
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
奥村 知世 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋地球生命史研究分野, 特別研究員(PD) (90750000)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ストロマトライト / 深海 / 蛇紋岩湧水 / ブルーサイト / 炭酸塩 / チムニー |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は下記の3項目において研究を進めた. 1. メタン生成古細菌の培養:ストロマトライトの堆積構造は浅海や陸域の水圏のみならず,深海の化学合成生態系が発達する環境の炭酸塩ノジュールからも報告されている.このような深海ストロマトライトはメタン生成古細菌とメタン酸化細菌の関与で形成されると推測されているが,詳しいメカニズムは未だよく理解されていない.メタンの関わる深海環境のストロマトライト形成場で生じる基礎的な微生物プロセスを知るために,受け入れ研究機関の研究者と共に,メタン生成菌の培養を行うことで様々な条件で作られるメタンの同位体的特徴を調べた. 2.深海チムニーの記載:南部マリアナの深海蛇紋岩湧水サイトで炭酸塩とブルーサイトから構成されるチムニー内には局所的にストロマトライト組織が発達しており,化学合成細菌の関与が示唆されている一部の太古ストロマトライト試料の貴重なモダンアナログと言える.平成27年度は過去3年の調査航海で採集されたチムニー試料の鉱物組成や堆積組織,現場での観察結果を取りまとめ,深海チムニーの基礎的な発達段階を明らかにした. 3. 27.4億年前のストロマトライト:西オーストラリアピルバラ地域で2014年に新しく報告された27.4億年前の海成ストロマトライトの調査とサンプリングを行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
南部マリアナの深海蛇紋岩湧水サイトで発達する炭酸塩・ブルーサイトチムニーの堆積組織と鉱物組成の特性を取りまとめた結果,5700 mという大水深では炭酸塩もブルーサイトも湧水のインプットがなくなると順次溶解することが明らかとなった.また,湧水活動の強弱に応じて堆積組織・鉱物組成・表面の動物相が変化し,ストロマトライト組織は局所的にしか存在しないことが明らかとなった.さらに,活発な湧水活動が生じているところでは,チムニー内にブルーサイトによって石化された微生物細胞が保存される様子を確認でき,深海のチムニー内に保存される微生物の痕跡のバリエーションを知ることができた. また,蛇紋岩湧水サイトでは,メタン生成菌の分布が予測されており,メタン生成菌の培養は,将来的に湧水採集が可能になった際の同位体分析値の解釈に重要な結果を得ることができた.さらに西オーストラリアのストロマトライト試料は大気と海洋の酸素濃度が急上昇した24億年前より古い時代の数少ないストロマトライト試料を採集することができた.これにより,幅広い太古試料を検討できるようになった. 以上のように,研究計画を着実に実行し当初想定していた以上に貴重な試料を入手できたことから,上記の評価とした.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の調査航海では荒天のため予定された回数の潜航調査を行うことができず,課題であった湧水を採集することができなかった.平成28年度後半に予定されている調査航海では湧水採集に再挑戦するとともに,周辺地形の詳細マッピングと追加サンプリングを行うことで深海のチムニーを発達させる地球化学的条件を明らかにする.また,これまでに採集した試料について16S rRNA遺伝子の系統解析やFISH法を用いた観察を進め,深海でストロマトライト組織を形成する微生物種とその働きを特定する. それと並行し,採集した西オーストラリアの太古ストロマトライト試料の観察や化学分析を進める.
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Research Products
(7 results)