2015 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ細孔内の相転移:カーボンナノチューブ内の水の固液臨界現象を中心に
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15H05474
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
望月 建爾 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (40734554)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 臨界現象 / 水 / カーボンナノチューブ / 分子動力学 / アルゴン |
Outline of Annual Research Achievements |
気液/液液臨界点とは異なり、固液臨界点の存在は如何なる分子に対しても否定されてきた。その理由は対称性の破れの議論と実験的観測の欠如に由来する。一方、分子シミュレーションでカーボンナノチューブ(CNT)に内包された水の結晶化を再現すると、ポテンシャルエネルギーが連続的に変化する場合がある事が報告されていた。しかし、固液臨界点の証拠は明示されておらず、その存在は謎のままであった。 我々は長さ数百Å、内径1nm程度の数種類のCNTを用いて、分子動力学計算を行い、臨界現象を示すあらゆるデータを正攻法で集めた。まず、体積・温度一定の計算を様々な条件で行い、体積を変化させても圧力が変化しない領域(2相分離)と圧力が変化する温度(1相)がある事を示し、臨界点の位置を特定した。局所密度の分布から2相分離を明白にし、等圧比熱/等温圧縮率が臨界点へ向けて発散傾向にある事を明らかにした。拡散係数/構造因子から低温での結晶形成を示した。圧力・温度一定条件で、有限サイズスケーリングを行い、臨界点の存在が系のサイズに依存しない事を示した。さらに、調査した全ての氷が固液臨界点を持つ事を示し、その存在がCNT内の氷に対しては”一般的”である事を見つけた。また、局所構造解析から、ミクロ相分離が連続的な融解を可能にしている事を明らかにした。さらに、カーボンナノチューブに内包されたアルゴンでも固液臨界点が存在することを確かめた。この結果は、固液臨界現象が水素結合ネットワークによらず、様々な流体に対し現れることを示唆する。 これらの成果をまとめ、PNASとPCCPに論文を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1.交付申請書に記述した1年目の実施計画(カーボンナノチューブ内の水の3次元相図の作成、固液臨界点の証明)を達成した。 2.同2年目の実施計画(固液連続転移の動的・構造的特徴の解明、基地の臨界点との比較)の一部を達成した。 3.これらをまとめ、論文を発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
交付申請書に記述した計画通り、以下の研究を順次実施する 1..固液連続転移の動的・構造的特徴の解明、既知の臨界点との比較 2.臨界揺らぎが疎水・親水性溶質に及ぼす効果の解明 3.壁や内包分子の相互作用・バルク的性質が現れる直径に注目し、固液臨界点を導く要因を特定
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Research Products
(4 results)