2016 Fiscal Year Annual Research Report
Phase Transitions of Water in Nanopores
Project/Area Number |
15H05474
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
望月 建爾 信州大学, 学術研究院繊維学系, 助教 (40734554)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 分子シミュレーション / ラマン分光 / 疎水性相互作用 / 共貧溶媒効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
ラマン分光実験と分子シミュレーションを組み合わせ、高分子に特有だと考えられていた共貧溶媒効果が、単純な疎水性溶質分子(tert-ブチルアルコール、TBA)でも起こることを見つけた。共貧溶媒効果とは、高分子が水とアルコール、それぞれの溶媒には溶ける(溶液は透明)一方で、水とアルコールの混合溶媒には溶けない(白濁する)という不思議な現象である。この現象は広く知られていたが、その分子機構は不明のままだった。我々は、問題究明のためには、共貧溶媒効果を引き起こす最低限の要素を特定する事が重要だと考えた。具体的には、高分子以外の単純な分子(TBA)でも共貧溶媒効果が起こるのか?を調べた。TBA(C4H10O)は、高分子とは違い非常に単純な構造をしている。いかなる濃度のメタノール水溶液でも無限に溶け、白濁や相分離が起こらないため、目で見て凝集を調べることはできない。我々は、ラマン分光法と多変量スペクトル分解法を組み合わせた実験方法を用い、TBA分子の周りに配位する溶媒分子の量を評価する事で、メタノール水溶液中でTBA分子の凝集が起こっている事を明らかにした。さらに、分子シミュレーションと理論化学的手法(Wyman-Tanford理論)を用いて詳細を調べ、TBAがメタノール水溶液中で凝縮しやすいのは、メタノールが単体のTBAよりも、凝集したTBAを好む事が原因であり、またメタノール水溶液中でTBA分子の疎水基同士が強い引力相互作用を示す事を見つけた。これらの結果は、一見複雑に見える共貧溶媒効果の本質は、高分子の複雑な構造にあるのではなく、極端に小さな分子でも観察でき、メタノール濃度により変化する疎水基の引力相互作用にある事を見つけた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の疎水壁中の水の相転移に限定していたが、より広い視点から疎水性相互作用が水溶液の構造変化に与える影響を調べた。メタノール水溶液中の共貧溶媒効果を、分子シミュレーションとラマン分光から多角的に調査し、成果を論文としてまとめた。
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Strategy for Future Research Activity |
疎水性相互作用が水の結晶化に与える影響を調べる。具体的には、実験で見つかっているポリビニルアルコールが氷の均質核生成の温度を上げる理由を粗視化モデルの分子シミュレーションを用いて調べ、分子機構を明らかにする。
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Research Products
(5 results)