2017 Fiscal Year Annual Research Report
反応性超分子フレームワーク:反応場の構築と反応の可視化
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15H05480
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
近藤 美欧 分子科学研究所, 生命・錯体分子科学研究領域, 助教 (20619168)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 錯体化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体中の金属酵素では、反応点となる金属錯体の周りに存在する反応場の構造・性質が高効率・高選択な物質変換反応の進行に重要な役割を果たすことが知られている。本申請課題では、新規物質変換反応場の構築並びに反応の可視化が可能な錯体プラットフォームの創製を目指し、研究を行っている。 これまでの研究により、分子性触媒モジュールの非共有性相互作用を駆動力に構築される超分子フレームワークを開発してきた。このフレームワークは細孔の設計性が高く、触媒活性点となるオープンメタルサイトを均一に導入することが可能な新材料である。本年度の研究では、モジュールにRh(II)二核パドルホイール錯体であるRh2(ppeb)4を用いた。この錯体は配位子同士のアレーン-パーフルオロアレーン相互作用によってフレームワーク構造へと自己集積することが明らかになっている。そこで、この超分子フレームワークの触媒材料としての応用を目指し、研究を行った。 まず、Rh2(ppeb)4錯体のaxial位にカルベノイド前駆体であるトリアゾール誘導体を導入したRh2(ppeb)4(X-TR1)2 の合成と構造決定を行った。単結晶X線結晶構造解析の結果、トリアゾール誘導体がRhのオープンメタルサイトに導入された状態を保ったまま、フレームワークを構築していることが明らかになった。加えて、トリアゾール誘導体の配位様式はトリアゾロピリジン環のN2で配位するA配位と、N1で配位するB配位の2パターン存在し、結晶化溶媒の種類によってパターンの組み合わせが変わることも確認された。また、トリアゾール誘導体をカルベノイド前駆体としたスチレンのシクロプロパン化反応を検討した。その結果、均一系、不均一系条件の両方において、目的のシクロプロパン化反応が進行することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度においては、フレームワーク触媒の構築が反応性に与える影響を精査することを目的に研究を遂行する予定であった。そこで、様々な基質を用いてフレームワーク触媒と均一系条件での反応をおこない、反応選択性・反応効率について検討した。その結果、フレームワーク触媒を用いた場合に、目的とする反応が進行することが明らかになった。しかしながら、反応に用いた基質の反応性が十分でなく、過酷な条件での反応を行う必要が生じ、この条件ではフレームワーク構造が完全には保たれない状況となった。そのために、フレームワーク構造と反応性の相関について一部不確定性が生じている。以上の理由から進捗状況は当初計画と比較してやや遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の現在までの進捗状況の項で述べた通り、現在生じている問題は、基質の低反応性である。これは主に、カルベノイド前駆体としてトリアゾール誘導体を利用していることに起因していると考えらえる。トリアゾール誘導体は熱的にジアゾ体に変換され、変換されたジアゾ体がカルベノイド種を生成する。そこで、今後はよりジアゾ体に変換されやすいトリアゾール誘導体を利用した反応性の検討を行う。トリアゾール誘導体に関しては、電子吸引性の置換基を導入することでジアゾ体への変換が効率的に進行することが知られているため、このような性質を持つ新たな基質の合成を行う。得られた基質について、均一条件ならびにフレームワーク触媒を用いた場合の反応性の評価を行い、フレームワーク触媒の有する反応場の構造が触媒能に与える影響について検討する予定である。
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Research Products
(19 results)