2017 Fiscal Year Annual Research Report
Development and activation of stand-alone photocatalyst systems for visible-light-driven water splitting
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15H05494
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久富 隆史 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (00637481)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 粉末光触媒 / 水分解 / 太陽エネルギー / 水素 / 半導体 / 光触媒シート / Zスキーム / 耐久性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は自立型水分解用光触媒反応系として,粒子転写法を応用して水素生成光触媒と酸素生成光触媒が導電層に固定化された光触媒シートを作製し,太陽光水素エネルギー変換効率(STH)を向上させることを目指している.平成28年度は,炭素薄膜を導電層とする光触媒シートを開発し,常圧下で1.0%のSTHを維持することに成功した.しかし,光触媒材料の吸収端波長が520 nm程度と短いためにSTHの伸びしろが小さいことや,シート作製に真空プロセスを用いるために安価に大面積展開することが困難であった.平成29年度は水素生成光触媒として710 nmまで長波長側の光を利用可能な酸硫化物光触媒を光触媒シート作製に応用可能とした.また,紫外光応答光触媒の活性や寿命を飛躍的に向上させた. La5Ti2Cu0.9Ag0.1S5O7光触媒はドーピングにより光カソードとしての特性が改善される一方で,粉末懸濁液としての水素生成活性が低下する.このことを利用して様々な比較実験を行い,光触媒シートの水分解活性が,水素生成光触媒粉末の懸濁液としての活性よりも,光カソードとしての活性に相関していることを明らかにした. また,紫外光応答光触媒であるAlドープSrTiO3の調製時に,Al2O3粉末を添加することで粒子成長を抑制し,365 nm単色光照射下における水分解反応のみかけの量子効率を30%から56%へと向上させた.さらに,助触媒として酸化モリブデンを共担持することで,みかけの量子効率が69%まで向上すること,酸化コバルトを共担持することで常圧下における水分解活性の耐久性が改善されることを発見した.開発した光触媒粉末をシート化し,人工光合成化学プロセス技術研究組合らと共同で大面積展開に適した反応器の開発を行った. 今後,長波長応答材料の応用や塗布プロセスによる光触媒シート作製法の開発を継続する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
710 nmまでの長波長の可視光を利用可能なLa5Ti2Cu0.9Ag0.1S5O7を光触媒シートの水素生成光触媒として利用することが可能となった.従来用いていたLa,Rh共ドープSrTiO3は520 nm程度までの可視光しか利用できなかったため,応答可能な波長が200 nm近く長波長化された.研究の過程で,光触媒シートの水分解活性が,光触媒粉末の懸濁液としての活性よりも光電極としての活性に相関することを明らかにすることができた.現状,酸素生成光触媒には吸収端波長が520 nm程度のBiVO4を用いている.しかし,予備的な研究において,600 nmまでの可視光を吸収する酸窒化物半導体を酸素生成光触媒に用いてシート化した場合にも,可視光照射下で水を水素と酸素に分解できることを示唆する結果が得られている.そのため,長波長応答材料のみからなる光触媒シートによる水分解反応が可能となる見込みである. 紫外光応答SrTiO3による水分解反応の近紫外領域における量子効率は他の光触媒系と比べても圧倒的に高いものである.既に本課題で開発した流通式水分解活性評価装置による長期反応耐久性の評価や活性安定化機構の検討に着手しており,研究は着実に進展している. これらのことから,シート作製プロセスの改良,利用可能な光触媒材料の吸収端波長の長波長化,水分解活性に影響を与える要因の明確化,耐久性試験の実施と安定化・劣化機構の検討において研究が順調に進捗していると評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度までの成果を踏まえ,光触媒シートの高活性化と作製プロセスの改良を継続する.水素生成触媒としてSrTiO3:La,Rh,酸素生成光触媒としてBiVO4:Moを用いた系については,各種導電性コロイドのペーストを用い,大気中プロセスのみからなる塗布型光触媒シートの作製と活性化を継続して研究する.導電性材料による酸素還元反応の抑制や,光触媒粒子と導電性材料の間の接触抵抗の低減が重要であることが予想されており,導電性材料の選定や塗布,後処理,表面修飾の条件を詳細に検討する予定である. 並行して,従来よりも長波長応答可能な(酸)窒化物・(酸)カルコゲナイドからなる光触媒シートを作製し,太陽光の効果的な利用を目指す.水素生成光触媒としてLa5Ti2(Cu.Ag)(S,Se)5O7,酸素生成光触媒としてLaTiO2N,Ta3N5,BaTaO2N,BaNbO2Nをベースとした材料を中心に応用研究を進め,600 nm以上の波長で動作可能な光触媒シートを作製する.既往の研究によれば,長波長応答可能な酸素生成光触媒は光アノードとして用いた場合に光電流開始電位が貴な電位にあり,シートへの応用上特性が不十分である場合が多い.平成29年度の知見に基づけば,光アノードとして用いた場合の光電流開始電位を向上させることが必須であると考えられ,材料合成,裏面導電層の成膜プロセス,酸素生成活性点の構築などを通じ,光アノードと光触媒シートの両面から活性向上に必要な要因を明らかにしていく. AlドープSrTiO3に関しては長期耐久試験を継続し,触媒調製の様々な段階で材料物性や反応特性を分析し,助触媒共担持による耐久性向上の要因を明らかにしていく。より実用条件下に近い条件を想定し,加温下における耐久性試験や劣化触媒の反応特性(圧力依存性など)を評価し,一層優れた安定性を示す表面修飾法の開発を進める.
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Remarks |
NEDOと人工光合成化学プロセス技術研究組合(ARPChem)らとの共同研究として実施
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Research Products
(25 results)