2016 Fiscal Year Annual Research Report
極高感度光電子検出による有機半導体の伝導準位完全計測への挑戦
Project/Area Number |
15H05498
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
中山 泰生 東京理科大学, 理工学部工業化学科, 講師 (30451751)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 分子性固体 / 表面・界面物性 / ギャップ内準位 / 有機エレクトロニクス / 有機単結晶 / 価電子バンド / エピタキシー / 光電子収量分光法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,ppm以上の極高感度での光電子計測に基づいて,有機半導体物質の電荷輸送現象に関わる伝導準位を完全計測することを目的とする。有機デバイスの示す電荷輸送現象の理解と最適化のためには,電荷輸送準位として従来から考慮されてきた単純なHOMO/LUMOのエネルギー準位接続モデルのみでは限界があり,バンド分散,エネルギーギャップ内に潜在する微少準位,さらに伝導電荷や励起子のエネルギー分布に関する実証的な知見が求められている。このため,本研究では,ギャップ内準位やポーラロン・励起子の直接観測を可能とする極高感度光電子計測装置の開発に加えて,有機「真性半導体」としての高純度有機単結晶の電子物性,さらにデバイス内部の機能性ヘテロジャンクションをモデル化した分子界面の物性評価まで,多面的な実証研究を展開している。 平成28年度の研究実績として,代表的な高移動度p型有機半導体材料であるペンタセン単結晶の価電子バンド分散計測に初めて成功した成果が挙げられる[原著論文1件,プレスリリース1件]。この成果は専門誌の1面に掲載されるなど,対外的にも注目を集めた。また,真空劈開によりペンタセン単結晶の表面不純物を除去することにも成功した[原著論文1件(印刷中)]。一方,ペンタセン単結晶表面上に構築される高秩序な有機半導体ヘテロエピタキシャル界面の構造決定についても,原著論文3報,国際学会招待講演1件などの研究業績を挙げ,さらに原著論文1件を投稿中である。また,界面形成条件によるヘテロ界面の結晶性変化,および材料分子の構造がエピタキシャル性に及ぼす効果についても研究成果を蓄積している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究計画として,「1.高感度光電子収量分光計測システムの構築」,「2.有機「真性半導体」単結晶の物性計測」,および「3.有機半導体単結晶へのヘテロエピタキシャル接合形成とその物性評価」の3点を掲げた。 「1」のシステムは,本研究課題により導入した低迷光広域分光光源および超高真空測定チャンバーを基本構成とする。平成28年度には,この測定チャンバーに有機半導体分子線エピタキシー(MBE)が可能な超高真空試料準備チャンバーを接続し,さらに窒素置換グローブボックスとの間での試料移送が可能な真空ロードロック機構を追加した。これにより,有機「真性」半導体単結晶および有機半導体ヘテロエピタキシャル接合の電子構造を本装置により実測できる準備が整ったといえる。価電子帯エネルギーが既知の有機半導体(ペンタセン)単結晶を標準試料として本装置により性能評価を行ったところ,妥当なイオン化閾値が既存の装置より低ノイズで計測できることが確認された。 「2」については,大気由来不純物の生成を回避したペンタセン単結晶試料について,上述の試料ロードロック機構を用いることで,開発した高感度光電子収量分光計測システムによる「真性」電子物性計測に着手しているほか,外部機関を利用した価電子バンド分散および内殻準位計測を進めており,前項に記述したような研究業績を挙げている。 「3」についても,前項記載のような研究成果が順調に蓄積されているのに加え,単結晶上に形成した界面の電子物性計測,および大気由来不純物を排した有機「真性」半導体単結晶を基板とするヘテロエピタキシャル成長の観察も進め,成果が挙がりつつある。 以上を総合的に考慮し,本研究の進捗状況は「おおむね順調に進展している」と判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
上掲の研究目的の達成のため,平成29年度には「1.光電子収量分光計測システムの高感度化」,「2.有機「真性半導体」単結晶の物性計測」,および「3.有機半導体単結晶表面上へのエピタキシャル接合形成とその物性評価」を引き続き進めていく。 「1」については,現状において光電子計測に用いているバッテリ駆動微小電流計に加えて,試料から放出される1電子から検出可能な光電子増倍管による極高感度光電子検出を実現し,併せて照射紫外光量の同時モニタシステムおよび光照射による表面電位応答の計測のための真空ケルビンプローブを増設することで,有機半導体物質の伝導準位完全計測へ向けて研究を進展させる。 「2」については,これまでの研究成果から,表面不純物の発生要因は大気成分であることが明らかとなったことから,前項で述べたように,有機半導体単結晶表面への大気曝露を回避できる試料作製システムを整備し,これを用いて調製したペンタセン単結晶の「真性」価電子準位の計測にも着手している。平成29年度においても,不純物生成要因を排した「真性半導体」としての有機単結晶試料に対して,「1」で開発するシステムに加えて,外部機関における価電子バンド分散計測,内殻準位計測の複合的な実施により,有機半導体の「真性」電子準位の解明を実現する。 「3」については,これまで有機単結晶「基板」上に形成される有機ヘテロエピタキシャル接合の結晶構造を明らかにするなかで,こうした高秩序界面の形成過程を詳細に調べることで,分子同士の接合構造がどのように決まり,成長するのか,主要なファクターを実証的に解明できる可能性も示されている。平成29年度には,これまで取り組んできた有機ヘテロエピタキシャル接合の構造研究をさらに進めるのに加え,電子物性計測も併せて実施することで,有機分子集合体の構造と機能の解明を目指す。
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Research Products
(30 results)
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[Journal Article] Epitaxial growth of an organic pn-heterojunction: C60 on single crystal pentacene2016
Author(s)
Yasuo Nakayama, Yuta Mizuno, Takuya Hosokai, Tomoyuki Koganezawa, Ryohei Tsuruta, Alexander Hinderhofer, Alexander Gerlach, Katharina Broch, Valentina Belova, Heiko Frank, Masayuki Yamamoto, Jens Niederhausen, Hendrik Glowatzki, Jurgen P. Rabe, Norbert Koch, Hisao Ishii, Frank Schreiber, Nobuo Ueno
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Journal Title
ACS Applied Materials & Interfaces
Volume: 8
Pages: 13499-13505
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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[Presentation] Functional Organic and Organic-Inorganic-Hybrid Materials Studied by Excitation Energy Dependence of the X-ray Photoelectron Spectroscopy2016
Author(s)
Yasuo Nakayama, Yuta Mizuno, Soichiro Yamanaka, Tomoya Sato, Ryohei Tsuruta, Yuki Uragami, Masayuki Yamamoto, Keiichirou Yonezawa, Kei Hayakawa, Ludmila Cojocaru, Satoshi Kera, Nobuo Ueno, Satoshi Uchida, Hisao Ishii, Kazuhiko Mase
Organizer
The 8th Workshop on Advanced Spectroscopy of Organic Materials for Electronic Applications (ASOMEA8)
Place of Presentation
岡崎コンファレンスセンター(岡崎市)
Year and Date
2016-11-23
Int'l Joint Research / Invited
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[Presentation] Valence Band Structures of the Pentacene Single Crystal2016
Author(s)
Masataka Hikasa, Yuta Mizuno, Shinichiro Ideta, Kiyohisa Tanaka, Hisao Ishii, Yasuo Nakayama
Organizer
The 8th Workshop on Advanced Spectroscopy of Organic Materials for Electronic Applications (ASOMEA8)
Place of Presentation
岡崎コンファレンスセンター(岡崎市)
Year and Date
2016-11-23
Int'l Joint Research
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[Presentation] Heteroepitaxial Organic pn-junction: C60 on the pentacene single crystal2016
Author(s)
Yasuo Nakayama, Yuta Mizuno, Takuya Hosokai, Tomoyuki Koganezawa, Ryohei Tsuruta, Alexander Hinderhofer, Alexander Gerlach, Katharina Broch, Valentina Belova, Heiko Frank, Masayuki Yamamoto, Jens Niederhausen, Hendrik Glowatzki, Jurgen P. Rabe, Norbert Koch, Hisao Ishii, Frank Schreiber, Nobuo Ueno
Organizer
EMN (Energy Materials Nanotechnology) Organic Electronics and Photonics Meeting
Place of Presentation
San Sebastian (Spain)
Year and Date
2016-09-11
Int'l Joint Research / Invited
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[Presentation] Heteroepitaxy of C60 on the Pentacene Single Crystal Surface2016
Author(s)
Yuta Mizuno, Takuya Hosokai, Tomoyuki Koganezawa, Ryohei Tsuruta, Alexander Hinderhofer, Alexander Gerlach, Katharina Broch, Valentina Belova, Heiko Frank, Masayuki Yamamoto, Hisao Ishii, Frank Schreiber, Nobuo Ueno, Yasuo Nakayama
Organizer
The 18th International Conference on Crystal Growth and Epitaxy (ICCGE-18)
Place of Presentation
名古屋国際会議場(名古屋市)
Year and Date
2016-08-11
Int'l Joint Research
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