2015 Fiscal Year Annual Research Report
多並列水中気泡内プラズマを用いた高濃度有機排水の高速フロー処理
Project/Area Number |
15H05516
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
竹内 希 東京工業大学, 理工学研究科, 講師 (80467018)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | OHラジカル / 促進酸化処理 / 気液界面プラズマ / 高濃度有機排水 |
Outline of Annual Research Achievements |
水中気泡内プラズマにより生成される過酸化水素とオゾンを利用した促進酸化処理を実現すべく,プラズマの交流駆動においてプラズマへの投入電力を決定するバラストキャパシタと活性種生成量の関係を調査した。投入電力はバラストキャパシタの容量に比例して増加し,容量を変えることで過酸化水素およびオゾンの生成比を広範囲で制御できることが分かった。水中気泡内プラズマの多並列交流駆動においては,キャパシタ容量に応じて各処理孔への投入電力が決定され,複数の処理孔において活性種の選択的生成が可能となった。しかし,生成されたオゾンの大部分は処理水に吸収されることなく気中に排出されてしまっている。よって次年度は,オゾンの利用率を向上するとともに,処理水中の有機物の高効率分解達成を目指す。 有機物の高効率分解に適した過酸化水素とオゾンの供給比を明らかにするため,過酸化水素およびオゾンの供給量をパラメータとした液相反応のモデルを構築し,数値シミュレーションを行った。過酸化水素およびオゾンはOHラジカルのスカベンジャとしてOHラジカルを消費してしまうため,いずれかの過剰供給は分解効率を低下させる。過酸化水素の供給モル量がオゾンの約0.5倍のときに,最も分解速度が大きくなることが分かった。 また,処理水中に生成されるOHラジカルの定量計測手法として,テレフタル酸ナトリウムを用いた化学プローブ法を検討した。テレフタル酸ナトリウムとOHラジカルの反応により生成される2-ヒドロキシテレフタル酸(HTA)の蛍光計測によりOHラジカルの定量を行うが,プラズマ処理によるHTAの分解を考慮し,また,プラズマガスに応じたHTA生成反応の選択率を用いることで,従来よりも精度よくOHラジカルを定量できることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H27年度の実施計画では,(1)プラズマリアクタ構築,(2)活性種生成特性,(3)有機物分解特性,(4)液相反応モデル化および数値シミュレーション,の4項目を予定していた。 項目(1)および(2)については,処理孔が1つおよび多並列駆動として処理孔が5つのプラズマリアクタを作成し,活性種生成特性を明らかにした。計画では処理孔20並列を予定していたが,処理孔の増加は容易である。(3)については,プラズマにより生成されたオゾンの利用率が低く,目標とする有機物の分解速度・効率に達していない。オゾン利用率の向上が,H28年度の課題の1つである。(4)については,酢酸の簡易的な分解モデルを用いた液相反応シミュレーションにより,過酸化水素とオゾンの供給モル比が0.5程度で最も酢酸の分解効率が高いこと,またその理由を明らかにした。 また,計画していた上記4項目に加えて,化学プローブ法による液相OHラジカルの正確な定量手法を提案した。 以上より,計画はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
H27年度の研究により,有機物の高速・高効率分解には,プラズマにより生成したオゾンの利用率向上が必須であることが分かった。そこで,気泡の裁断化,もしくはオゾンを含むガス循環により,オゾン利用率の向上を図り,酢酸およびメチレンブルーに代表される有機物の高速・高効率分解を目指す。まずはバッチ処理で高効率分解に必要な要因を洗い出し,続いてフロー処理に展開して,高速・高効率な有機物分解処理の実現を目指す。 液相反応モデルに関しては,副生成物の計測などを通して酢酸の分解過程を明らかとし,より詳細な分解モデルを用いた数値シミュレーションを実施する。 液相OHラジカルの定量評価が可能となったので,気液界面を通しての活性種輸送も考慮したプラズマシミュレーションを実施し,プラズマ中での活性種生成と液相への輸送に関する反応過程も明らかにする。
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Research Products
(6 results)