2016 Fiscal Year Annual Research Report
河川―湖沼のコネクション:霞ヶ浦流域圏におけるリン化合物負荷の定量化に関する研究
Project/Area Number |
15H05533
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
篠原 隆一郎 国立研究開発法人国立環境研究所, 地域環境研究センター, 主任研究員 (00610817)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 核磁気共鳴装置 / リン |
Outline of Annual Research Achievements |
本プロジェクトにおける主な目的は、河川水―湖水への流入負荷の定量化及び,それに伴う形態変化を明らかにすることである.それらについて,以下の成果を得た. ① 湖沼水の懸濁態リンの形態分析の簡便化に関する成果:様々な懸濁態リンの形態を,核磁気共鳴装置(NMR)を用いて分析する際には,濾過を行い,懸濁物を捕集する必要がある.霞ヶ浦のように,極めて濃度が濃い湖では,47mm径のGF/Fフィルターを用いた20L程度の濾過を我々の研究グループは採用してきた.しかし,リンが極めて低濃度の湖沼や河川では,本方法では捕集することが極めて難しい.通常,分析の際必要なリンの量は1~2mgP程度であり,濃度が0.1mgP L-1の湖では,10~20L程度の濾過量となる.一方で,極めて低濃度の湖・河川では,濃度が0.005mgP L-1以下になることもしばしばあり,その濃度の湖水を採取・分析するには,200L以上の濾過量を確保する必要性がある.そこで研究員は,最初に濾過量を確保する手法を考えた.結果,濃度が極めて薄い水においても,2時間程度の時間で,濾過を行い,その後分析にも必要なリンの量を確保することができた.
② 湖沼水の懸濁態リンの形態分析の高精度化に関する成果:ろ過の手法と共に,分析手法の高精度化にも取り組んだ.本研究では2次元NMR(HMBC)を用いて分析する手法を開発した.特に,C-Pが直接結合しているphosphonatesの化合物は相当量含まれており,これまで分析が不可能だった未知の化合物が存在することが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
分析手法の開発を行ってきており、現地観測の予定が現在のところ遅れている。しかし新年度には早めに現地観測に取り組み、懸濁物に含まれるリンについての現地観測を詳細に行う予定にしている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までの現地観測によって、懸濁物に存在する炭素(C)、窒素(N)、リン(P)含量については判明している。その結果、霞ヶ浦流入河川の中では最大の桜川では、懸濁物中のC:P、あるいはN:P比が割合小さいが、河川から湖に流入し、流下するにつれてC:P比、N:P比が上昇する傾向がある。つまり、C、Nに比べてPの減少量が大きい可能性がある。これは存在する植物プランクトンや、バクテリアのバイオマスの中に存在するリン含有量が流下と共に異なっているためである。また、元素の比の変化によって植物プランクトン、バクテリアの細胞内に、異なるリン化合物が存在する可能性もある。そこで、どのようなリンがそのC:Pおよび、N:P比に影響を与えているか解析を行う。これは河川から流入したPがどのような形態へと変化するのかをも予測するものである。 一つ目のアプローチは、Pの化合物分析である。以前開発したカートリッジフィルターでの懸濁態リンの分析を用いる.つまり,0.45μmのカートリッジフィルターを用いて濾過を行い,その中に含まれている化合物を核磁気共鳴装置で分析することで,どのようなリン化合物が流下と共に変化しているかを解析する。二つ目のアプローチは、粒径別のリン含有量の分析である。懸濁物中に含まれている物質は、粒径別に概ね異なる.たとえば,0.7~2.0μmの間にはシネココッカス類が多く含まれている.粒径別の分画を行うことで,どのような物質がC,N,Pの存在比を変化させるのかを明らかにする.最後に、それぞれの粒径画分等で、バクテリアの含有量を明らかにする。これはDAPI染色を用いてバクテリアの計数を測定するアプローチを用い,バクテリアの存在量によるリン化合物の変化を明らかにする. 以上3点の手法を行うことで、どのような画分のリンが、どのようなファクターで変動し、富栄養化に寄与しているかを明確化する。
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Research Products
(6 results)