2015 Fiscal Year Annual Research Report
伝統技術に基づく木造社寺建築物の耐震性能評価法と耐震補強法の確立
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15H05537
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
瀧野 敦夫 奈良女子大学, 生活環境科学系, 講師 (10403148)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 伝統木造 / 社寺建築物 / 復元力 / 耐震性能 / 耐震補強 / 貫 / 板壁 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、実験データが僅少である木造の社寺建築物について、より精度の高い耐震性能評価法を構築するとともに、伝統技術に基づく耐震補強構法を考案することを目的とし、既存建物の調査、耐震要素の実験、補強法の提案ならびに検証実験、建物全体の構造解析による性能検証までを実施することを目指している。 初年度である平成27年度においては、まず数多くの既存建物の調査を実施した。調査は外観調査によるものがほとんどで、主な耐震要素を把握することを目的とした。また、いくつかの建物については、詳細な調査も実施しており、基礎的な振動特性やディテール調査なども実施できた。社寺建築物では、比較的大きい貫材が使われることが多いため、壁土が貫ごとに分断されていることが多く、このような仕様の土壁の耐震性能評価を次年度の実験計画に盛り込むこととした。また、次年度には板壁の実験も計画しているが、調査の結果から板壁の仕様にも様々な種類があることがわかり、貫材を含む軸組との関係性に着目して、実験計画を検討しているところである。 実験については、まずは基礎的な接合部である貫接合部の曲げ実験を実施した。この結果に基づき、次年度以降の板壁や土壁を含む軸組全体の実験結果の考察を行うとともに、貫接合部単体の性能評価も試みる。また、耐震補強構法として構造長押を用いた補強法の検証実験も実施した。特に平面的に二方向に配置された長押を接合することで両方向に有効となる長押補強を考案し、新たな接合方法の開発を試みた。さらに、長押補強を用いる際には柱への曲げモーメントによる負荷が大きくなる上に、既存建物では柱脚部が腐朽や蟻害により激しく劣化していることが多いことから、炭素繊維を用いた柱脚部の根継ぎの補強法についても実験による検証を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実在する社寺建築物の調査や貫架構の実験、長押補強の実験など概ね順調に進んでいるといえる。貫架構の理論的評価については平成27年度中には完了しなかったが、現在も継続して検討しており、大きな問題ではないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度については、貫接合部などを含んだ軸組内に板壁や土壁を併用した構面の実験を中心に実施していく予定である。平成27年度の調査で得られた知見に基づき、試験体の仕様を決定する予定である。またこれと並行して板壁補強の試験体についても実験を実施する予定である。補強法については、吸い付き桟を用いた板壁補強を中心に実施する予定であるが、この補強法についても周囲の軸組との耐力バランスが復元力を決定する重要な要因となるため、前述の実験と同様に検討する予定である。
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Research Products
(5 results)