2015 Fiscal Year Annual Research Report
水の電気分解を利用した酸化物薄膜固体デバイスの電気物性制御
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15H05543
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
片瀬 貴義 北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (90648388)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 先端機能デバイス / 酸化物エレクトロニクス / セラミックス / 電子・電気材料 / プロトン化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、安心・安全な水の電気分解を利用して、酸化物薄膜の電気物性をオンデマンド制御する薄膜固体デバイスの実現を目的とし、“室温”で電気的に酸化物薄膜にプロトンを脱挿入して電子相を自在制御する新しい手法の確立を目指している。具体的には、水を閉じ込めたナノ多孔性ガラスをゲート絶縁体とする薄膜トランジスタ構造で、ナノ平行平板間にバイアスを印可して生じるH+とOH-(水の電気分解)を利用して、酸化物薄膜の電解誘起プロトン脱挿入による金属-絶縁体相の可逆制御を行う。H27年度は、サファイア基板上にエピタキシャル成長させた二酸化バナジウム(VO2)薄膜上に、含水ナノ多孔質ガラスをゲート絶縁体とする薄膜トランジスタ構造を作製した。バイアスを印可してゲート絶縁体中の水を電気分解したところ、VO2薄膜が室温でプロトン化(VO2→HxVO2)し、絶縁体から金属に変調させることに成功した。また正・負のバイアスを交互に印加することで、可逆的にプロトン化/脱プロトン化できることが分かった。従来、酸化物のプロトン化には、水素中での高温加熱や電解液を用いた電気化学処理が必要でデバイス化が困難であったが、本研究で実証した薄膜固体デバイスにより、室温プロトン化を利用した新しい酸化物機能素子の開発に繋がることが期待できる。本年度の成果は、論文発表(T. Katase, K. Endo, and H. Ohta, Adv. Electron. Mater. 1, 1500063 (2015).)およびプレス発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題であった「室温プロトン化による酸化物薄膜の金属-絶縁体相制御」を達成することができた。H28年度は、本提案の室温プロトン化手法を利用して、新機能薄膜固体デバイスの作製に展開していく。
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Strategy for Future Research Activity |
H28年度は、本提案手法の具体的な応用性を示すために、安価で大面積化が可能なガラスの上にVO2多結晶薄膜を活性層に用いた薄膜固体デバイスを作製する。H27年度の知見を元に、VO2多結晶薄膜の室温プロトン化/脱プロトン化による金属-絶縁体相可逆制御に挑戦し、VO2のサーモクロミック現象(金属-絶縁体変化に伴って、明るい可視光は透過したまま、熱の原因となる赤外線の透過率のみが変化する)を利用したオンデマンド赤外線変調デバイスを実証する。
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Research Products
(29 results)